夏と言えば海。海と言えば水着。水着と言えば彼女の水着姿。当たり前のように最後にたどり着くのは「彼女=千代の水着姿」である。そういうことで、彼女である篠岡千代と海へやって来た。お互い部活が忙しくて行けるかどうかも分からなかったが、1日だけあったオフの日が偶然にも重なったのだ。折角のオフ、少し遠くの海へ行こうかと準太が提案し千代はそれにのった。

海の近くに作られている更衣室は意外にも大きく、外見からしてまだ作られたばかりだと分かる。準太と千代は更衣室前で別れて、それぞれ更衣室へ入っていった。男の準備は早いもので、5分して準太は更衣室から出てきた。
それから千代を待ち続けて約10分。千代はフリルが沢山ついているビキニを着て出てきた。ドット柄で色は爽やかなブルー、彼女の白い肌に良く似合っていた。準太には刺激が強すぎた。千代の水着姿はキラキラ輝いているように(準太には)見えた。準太は今にも鼻から吹き出そうな赤い汁を必死にすすり、何とか体内に戻す。そして何事もなかったかのように、爽やかな笑顔で手を差し伸べる。

「よし、行こうか千代」
「うん!楽しみだね!」

満面の笑みでそう答える千代は、本当にかわいくて。準太はその笑顔でまた鼻から赤い汁を出しそうになった。ギリギリそれを止めて千代から視線を逸らした。

しばらく歩いていると、意外にもこの海には海水浴客がいることに気づいた。穴場スポットと聞いて2人は来たからこれには驚いた。海に入ると言っても人が多すぎて、それすら困難な状況。無理して入ったとしてもそのあと、遊べるかと言ったら明らかに無理だ。千代の残念そうな顔を見て準太は焦った。

(折角のデートでこれはないだろ…。千代の笑顔が見たかったのに)

「あの、準太さん」
「どうした?」
「あっちの岩場に行きませんか?あそこなら人少ないですし」

千代が指差した方向には、大きな岩がごろごろ転がっている場所。しかし足場も悪そうで、千代が怪我をしてしまったら…と考えると「そうだな」とは言えない。でも千代の残念そうな顔は見ていたくない。準太は仕方なく、千代の提案した場所で休むことにした。近くに来てみると意外と岩場は安定していて、足場もそんなに悪そうではない。腰を下ろして正面を見ると、そこには絶景が広がっていた。

「綺麗ですね!きらきら光って、本当綺麗…」
「本当だ」

太陽の光を水面が反射してキラキラと輝いて見えた。海に入って楽しく遊ぶのもいいけど、こうして静かに2人で過ごす時間もいいかもしれない、準太は1人思った。千代の顔にも笑顔が戻り、ホッとした。

「千代、また来ような」
「はい!…でも今度は、もっと早く来ませんか?」
「えーと、どうして?」
「ふふっ。海にも入って遊びたいからです!」

千代は可愛く笑って岩場を飛び降りた。そして軽やかな足取りで更衣室へ向かって走って行った。

「…本当可愛い」

そっと1人で呟いて、千代のあとを追った。


∵君と一緒ならどんなところでも
(楽しいかもな)


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