毎日の様に7組の教室で繰り広げられる、いちゃいちゃカップルトーク。俺達にとってただのクラスメイトがやってるなら別に構わないが、そのカップルというのが野球部に所属する栄口とマネジの篠岡だから困っている。1組からわざわざ7組の教室を訪れ、窓際に移動し仲良く話を始める二人はもう名物になりつつあった。クラスの奴らも慣れたのか、栄口が来ると気軽に話しかけたりしてこのクラスの一人のような存在だ。
俺はいつもと同じ様に阿部と水谷と軽くミーティングを始める。だけどその最中も栄口と篠岡が気になって仕方がない。それは阿部も水谷も同じで、聞いてるようで二人は聞いてないようだった。今日のミーティングは意味のないものになるのは確実だった。
「でね、昨日栄口君の為にクッキー焼いたんだけど食べてくれるかな?」
「え、本当?!食べるよ!食べるに決まってるじゃん!」
「嬉しい!ありがとう、栄口君!」
仲良さそうに話す二人を見ていると、何も言えなくなる。だから俺達は毎日見ているだけで終わってしまうんだ。でも、みんなのマネジだった篠岡が突然誰かのものになったというのは皆ショックだったわけで。これは拷問に近かったり。そうじゃなかったり。
はあとため息をついて、阿部の方を再び見るとものすごい栄口を睨んでて。俺は恐ろしくなって背筋が凍った。水谷に至ってはへにゃりとなって涙を流すという始末。
「あは、栄口君ほっぺについてるよー」
「え、どこ?」
「ん、ちょっと待ってねー。…はい取れた!」
「ありがと。…ん、おいしい」
栄口が篠岡の指についたクッキーを、指ごと加えると黄色い声がそこらじゅうから聞こえた。ああああ!何でそこでそんなことをするんだ栄口!お前はもっと常識人だと思っていたっつーのに!・・・まだだ。
∵俺らの地獄は終わらない!
(はいあーん)
(あーn)(ちょっと待てお前らああああ!)
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