剪3設定
中3の秋、そろそろ志望校を決めなくてはいけない時期。金太郎と桜乃も志望校を考えていた。桜乃としては、金太郎がいる大阪の高校に行きたいと思っていたが両親に反対されその道は閉ざされた。両親が心配して反対してくれているのは分かっているけど、今の桜乃には辛かった。
「金ちゃん…。会いたい…っ」
桜乃が涙声でそう小さく呟くと、誰かに抱きしめられた。桜乃はこの温もりを知っている、大好きなあの人の温もり。
「金、ちゃん…?」
「桜乃!ワイも会いたかったで!むっちゃ懐かしいわ!」
金太郎の懐かしい笑顔、声、温もりに涙は余計止まらなくなっていた。止め処なく流れる涙を金太郎は舐めた。桜乃は驚いて、涙が引っ込んだ。金太郎はニコニコと笑顔で桜乃を見つめる。桜乃はやっと落ち着いたところで何故東京にいるのか聞いてみた。
「竜崎に言いたいことがあってな!ワイ、こっちの学校受けることにしたんや!そうすれば、竜崎とずっと一緒におれるやろ?」
「…っ!」
桜乃の目の前にいる赤髪の少年は地元を離れ東京に来ると言った。彼も桜乃と同じ事を考えていた。桜乃はそれだけで幸せで、頬が緩むのを感じた。金太郎は桜乃が微笑んだのに気づき、微笑み返した。
「金ちゃん、嬉しい。ありがとう!」
「うん!ワイも嬉しい!」
二人は仲良く手を繋ぎ、公園へ行ったり買い物に行ったり久々にゆったりと二人で過ごした。楽しい時間はどんどん過ぎていき別れの時間はあっという間にきた。お互い離れたくないという思いから手を繋いだままで、駅のホームまで来た。金太郎の乗る新幹線がきた。桜乃は名残惜しそうに、手を離し笑った。
「金ちゃん、元気でね。勉強も頑張って…私、応援してるから!」
「おおきに!桜乃も無理せんでな!」
「うん!金ちゃん、大好き!」
「ワイも竜崎が好きや!」
お互いに愛の誓いを交わし、金太郎は新幹線に乗り込んだ。桜乃と金太郎は最後の最後まで見つめあい、別れを惜しんだ。でも、それももう少しの辛抱だと思うと桜乃は頑張れる気がした。
∵貴方と過ごす日々を夢見て
(今日からまた頑張れるような気がした)
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