私だって、私だってオサム先生のことが好き。オサム先生の周りにいる綺麗で色気のある女の人みたいにはまだなれないけど、気持ちは負けない自信がある。でも時々どうしようもないくらい不安になるときがある。オサム先生は私が子供だからってキスも何もしてくれない。ただその理由が子供だからってだけじゃないのも知ってる。大事にされているのは分かっているつもりだった。
でも、切なくて苦しくて涙が出てくるの。大切にしてくれて嬉しいけど、その優しさが時々辛く感じるの。

「先生、私って先生にとって必要ですか?」
「何言ってるんや、桜乃ちゃん。先生、桜乃ちゃんこと大好きやで」

何を聞いてもいつもそればかり、私って本当に必要なんだろうか。

「桜乃ちゃんが大人になるまで先生待ってるからな」
「…早く大人になりたいです」
「ゆっくりでいいんや。先生ずっと待ってる」

先生の優しい瞳を見ても嘘を言っているようには見えなかった。いつもより少し真剣な顔してそう言った先生のことをもう少し信じてみよう。

「じゃあ、約束のキスしよか?」
「…せ、先生のばか…!」

数年後、ある小さな教会で歳が離れた二人の男女の結婚式が行われたというのはまた別の話。


∵大事にされてるのは分かるけど



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「見えない臓器の名前は」
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