夏真っ盛りの某日。東京では年に1度の大きな祭りが行われていた。青学テニス部は去年と同じようにメンバー全員で祭りに行く予定であった。1年のリョーマにとっては初めての祭りで、普段どおりそっけない態度だがとても楽しみにしている様子であった。しかし、部長である手塚は不参加であった。
「今年もすごい人だなー」
「あぁ、去年より夜店の数は10個増だ」
「手塚がいなくて残念だね」
部長の不参加というのはやはり影響が強く、表情はやや曇りがちだった。
***
「あの…手塚先輩」
「ん?何だ竜崎」
「今日リョーマ君たちと約束してたんじゃ…」
「気にしなくていい、断りの連絡は入れた」
人一倍、人のことを気遣う桜乃は不安そうな顔をして言った。手塚は優しく笑って頭を撫でた。
***
「あーやっぱりそう簡単には見つからないぜぃ」
「うん、この人ごみじゃ難しいかな」
東京の祭りに来るのは東京住民だけとは限らない。神奈川・立海テニス部も来ていた。
「なんや?立海も来てるやないか」
「「四天宝寺中…!」」
東京から遠く離れた大阪のテニス部、四天宝寺中も。
「俺様たちを忘れてんじゃねぇだろうな?」
「「やっぱり」」
やはり氷帝学園も。前例があるのでそんなに驚かないテニス部のメンバーたち。しかし、こうもイケメンが集まると注目が集まるのは不思議ではない。騒ぎに気づいた青学はその騒ぎの場所へと急いだ。
「あー!立海に四天宝寺に氷帝までいるよん!」
「クスッ…本当だね」
イケメン集団にまたイケメンが増え、そこは女性の黄色い声で包まれた。
とにかく静かなところへ…ということで草むらを掻き分けてしばらく歩く。肝試しのルートになっている道に出た。あちこちから女性の悲鳴が聞こえては消え聞こえては消え。
「なんや、戻った方がええんとちゃう?」
「そうッスね」
メンバー全員、意見一致で戻ろうとしたときだった。
「きゃっ!」
彼らの癒しの存在である竜崎桜乃の可愛らしい声が聞こえた。
((今の声は!))
「竜崎大丈夫だ。ゆっくり目を開いてみるんだ」
「…あ、人形…」
「竜崎は怖がりだな」
めったに笑わない手塚が声にだして笑った。桜乃はその顔を焼き付けるようにして見つめる。
((ちょっと待って!なにこの展開!))
この甘い展開に驚く者、十数人。すでに魂が抜けている者、十数人。我慢が出来なくなった者、数人。
「ちょっと待った!」
「ま、丸井さん!?」「丸井!」
当然、桜乃と手塚は驚いた。
「竜崎ちゃん!これどういうこと!?」
「あ、あの…その…」
桜乃は恥ずかしさのあまり真っ赤になり上手く喋れなくなった。
「竜崎と付き合っている。何か問題でもあるのか?」
手塚は桜乃の隣に立ちそうはっきり言った。手塚と桜乃が付き合っていても何の問題もないのだが、他のメンバーたちが納得するはずもなく。
「「問題大有りだっつーの!」」
「大事な大事な竜崎ちゃんをおじさん顔なんかに渡したくない!」
「お、おじ…っ?!」
「桜乃ちゃんとエクスタシー「自重しろ、変態が」
「俺様とエクスタシー「お前もか」
「テクには自信があるんじゃ」
「それやったら俺も負けてないッスわ」
「いやいや、俺だって負けてないッスよ!」
「テニスやったら負けないでぇ!」
「いや、テニスじゃないねん金ちゃん」
「いかに桜乃ちゃんを気持ちよくさせてあげれるかという勝負や「いい加減にしろよ」
ブラック大石のツッコミさえもスルーされ、勝負はエスカレートしていった。
「今のうちに肝試し再開しよう」
「あ、は、はいっ」
∵誰もが虜になるあの子には
(愛しい愛しい恋人がいましたとさ)
((あ!いねぇ!))
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