▽山本視点


チョコをくれるとばかり思っていた。ハルは俺のこと好きだっていう自信があったから。けれど実際14日に俺の手元に届いたチョコは同じ学校に通っているという見知らぬ後輩の女の子からのチョコ数個だった。ハルが俺を好きだと言うのは、俺の思い違いだったらしい。

(あぁ、恥ずかしい)

一人勘違いして、舞い上がって、ハルの訪問を心待ちしたりなんかして。ハルには他に好きな男がいたっていうのに。胸が痛い。張り裂けそうなぐらい痛い。何だこれ。痛い。辛い。ハルが好きなのは俺じゃない。それがとても悲しくて、気づけば俺の頬を生暖かいものが伝っていた。男のくせに情けない、とかそんなこと気にすることすらできない。ただ、悲しくて、苦しくて。何かに縋らないと立っていられないくらい胸が痛い。

今の俺は誰が見ても情けなく思うだろう。ハルだって、きっと笑う。そんなの駄目だ。ハルの幸せを願ってやらないと。好きな子の幸せを願うことしか今の俺にはできないから。

(ハル、幸せになれ。誰よりも幸せに――…)


残ったのは虚無感

title by Aコース

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2012/02/14:バレンタイン企画
バレンタインだというのに報われない話書いてどうするんだって話ですね。



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