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2月14日のバレンタインデーの前日に千鶴と千姫は近くのデパートのバレンタインデーコーナーにいた。早めに来たつもりだったがすでに若い女の子で賑わっていた。キャアキャアとお互い渡す相手を教えあったり、どのチョコがいいかなと一緒に考えたり、皆楽しそうである。千鶴にはその女の子たちがとても可愛く思えた。彼女たちは恋する乙女そのもので、キラキラと輝いて見えたからだ。ついつい千鶴は小さく微笑んだ。

「千鶴ちゃん、どうしましょうか」
「え?何が?」
「いやいや、何が?じゃなくて!この戦場の中に今から私たちも突入するのよ?」

千鶴はすでに戦場となったバレンタインデーコーナーを一度見て、そこでやっと気づく。この人ごみの中に自分たちも入っていかなくてはいけない。それはかなり体力が必要で、簡単に目的地までたどり着くとは思えない。うーん、としばらく作戦を考えてみるけれど何か思いつくわけでもない。その時突然千姫が立ち上がり、千鶴の腕をグイと思い切り引っ張りバレンタインデーコーナーに突入した。

「え、ちょ、待って!」
「ここで考えても仕方ないから中に突入するわよ!」
「え、あ、きゃっ」

思い切り引っ張られつまずきながらも何とか千姫のあとをついていく千鶴。そしていざ入ってみると込んでいるのは一部の場所だけであった。一部の場所というのは、「意中の人と両思いになれる」と女の子の間で噂のチョコだ。千鶴たちはそこを通り過ぎて奥の方のチョコの材料コーナーに向かった。すでに細かく砕いてあるチョコ3袋にデコレーション用のチョコペンやカラフルなチョコを買い、レジで会計を済ませ家に帰った。
そしてそのあと千鶴の家でチョコを完成させた。千姫はいつもお世話になっている君菊に、千鶴は恋人である沖田に。完成したそれを嬉しそうに眺めながら、二人は笑いあった。

***

「沖田さん!バレンタインデーのチョコです!」
「あ、作ってくれたんだ?ありがとう」

朝迎えに来た沖田にニコリと笑いながらチョコを渡すと沖田も嬉しそうに微笑みながら受け取る。その場で早速開けてひとつ口に放り込む。甘すぎないちょうどいい甘さ、それは沖田の好みに合わせたからだ。おいしいよ、沖田は千鶴に優しく微笑みそう告げる。

「良かったです。沖田さんに喜んで欲しくて作ったので」
「可愛いなあ千鶴ちゃんは。特別にキスしてあげる」
「え、」

千鶴が何かを言う前に沖田は千鶴の唇をふさぐ。
チョコレートの味が千鶴の口の中で広がる。唇を離した瞬間、沖田は満足そうな表情していたが千鶴は放心状態。それから千鶴が放心状態から元に戻ったのは5分後のことだ。


今日のキスは特別な味でした

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2011/02/14:バレンタイン企画



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