▽青葉視点


本当はあのチョコ、あんたにあげようと思ったんだよ。でも私は素直じゃないから、あげられなかった。どうせあんたはあかねさんから貰うだろうし私のなんかいらないでしょ?
そうは思ってみたけど、心の中ではすごい後悔している自分がいて。そんな自分がうざったくて、惨めで、ださくて。早く追い出したいのに、なかなか出て行かなくて…思い浮かぶのはあんたの顔。このチョコもしあげてたらどういう顔したんだろとか、何て言うだろうとか。くだらない疑問がいくつも浮かび上がってくる。

「ほんと馬鹿みたい。私からチョコ貰ったって喜ぶわけないのに」

小さく呟いたつもりだったのに、聞こえていたらしく、あいつは嫌な笑顔で私に近寄ってくる。俺に渡すものがあるんだろとでも言いたげな表情をしている。確かにあったけど、もう別の人に成り行きであげちゃったし今は私の手元にはない。でもそれで良かったのかもしれない。市販のチョコなんかあげてもあかねさんの手作りのチョコより味は劣る。あげたって、何の意味もないから。

***

「ない。あかねさんからもらったものだけで十分でしょ」
「何でそこであかねさんが出てくるんだよ。それに俺は青葉からのチョコが欲しいんだけど」
「、な、んで私のチョコなんか欲しいの?あかねさんのがあるんだからいいじゃん」

ああ、もうやっぱり素直になんかなれるわけがない。顔見れば思ってることと反対のことばかり口にしてしまう。何で、何であかねさんみたいに女の子らしくできないんだろう。別に女の子らしくなりたいわけじゃないけれど、少しは素直になりたい。

「理由なんて必要ない。俺はお前からのチョコが欲しい。東は貰ったのに俺が貰ってないのはむかつく」
「…」
「だから、くれ」

何それ。貰う立場なのにくれって…すごいえらそう。何か腹立つ。それでも、そんなあんたは嫌いじゃない。好き、とはまだ言えないけれど傍にいさせてほしい。私がいつか『好き』と言えるまで。

「…何か可哀相になってきました」
「は?」
「そんなにチョコが食べたいならあげますよ。チロルチョコですけど」
「青葉からもらえるなら何でもいい」
「…っ」

ストレートにそう言えるあんたが少し、ほんの少しだけど羨ましい。


ほんの少しだけ羨ましいよ
(私もストレートに言えればどんなにいいか)

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2011/02/14:バレンタイン企画



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