!R15注意



阿部には今の状況がよく理解できていなかった。今目の前にいる彼女は、働き者の優しいマネジ、のはずなのだか阿部には別人のように見えていた。太陽の光をたくさん浴びて、土で汚れても気にしないマネジが、今はただの一人の女に見えたのだ。優しい色の髪はふわふわで、小さめの暖色の花がついたカチューシャがついている。服は下は白い少しフリルのついたスカートに、上は淡い色のセーター。阿部は不覚にも胸をときめかされた。しかし、何故その彼女がここにいるのか阿部には分からなかった。

「篠岡、何で俺の部屋にいるわけ?」
「えっとね、バレンタインのチョコを渡しに来たんだけど…迷惑だった?」

今にも泣きそうな顔で首を傾げながらそう言う千代に阿部の胸はどきんと鳴る。迷惑なわけなかった、寧ろ嬉しかったのだ。チョコをわざわざ渡しに来てくれる健気さに自然と頬が緩む。それを必死で隠そうとする阿部に、千代はどうしたのと尋ねる。

「いや…なんでもねえ。つか迷惑じゃねえから、んな顔すんな」
「そ、か。良かったー」

阿部にそう言われ安堵の表情を見せる千代。その間も阿部は必死でにやける顔を隠そうとするのだが、中々元の表情に戻りそうになかった。何か話題を振ってごまかそうと思い、バレンタインのチョコの話をしてみる。すると千代は話に食いついてきた。阿部は自分の思い通りの展開ににやりと笑った。

「えっとね、阿部君甘いの苦手かなと思って…少しだけブランデー入れてみたんだけど」
「へえ。そこまで気を遣ってくれたのか。サンキュ」
「ううん、そんな大したことじゃないよ。口に合えばいいんだけど」

篠岡の作ったもんなら絶対うまい、そう言って彼は箱から一つチョコを取り出して口に運んだ。ふわりと広がる甘い香り、味、だがブランデーが入っているのでそれほど甘くはない。ちょうどよい甘さで、甘いものが好きではない阿部にとって好みの味である。阿部は千代の方を見て、おいしいよと言おうとした、だが視界がぐにゃりと歪む。しかし歪んだのは一瞬で、次は体が火照り頭がボーっとしてきた。

「阿部君?どうしたの?もしかして…おいしくない?」
「いや、違う。…ハァッ、体が、言うこときかねえっ」
「え、も、もしかして酔ってるの?」
「そうかもな。つーか入れたって言っても、微量だろ?となると俺かなり酒弱いよな」

阿部は情けねえな俺、と苦笑いしながら立ち上がり水を取りに向かう。が、立ち上がってもフラフラとすぐに座り込んでしまう。千代は傍に駆け寄り、私が持ってくるよと優しく笑いかけた。元はといえば私がブランデーを入れたのが悪いんだし、そう言って立ち上がろうとしたが阿部に腕を捕まれそれは出来なかった。阿部は熱い視線を送ってきて、千代は目を逸らせなかった。

「あ、べく…んっ」
「篠岡…」

阿部の突然の口づけに驚きしばらく放心状態の千代。しかしすぐに我に返り、阿部を見て何故キスしたのかと問おうとしたのだが、またもや阿部に唇を奪われた。今度は先ほどよりも激しい口づけ、千代の唇を何度もついばみ、どろどろになるほど激しく口腔に舌を入れてくる。息をつく暇もなかった。あまりの激しさに千代は気を失うかと思った。

「篠岡、も、う我慢できないんだけ、ど…いいか?」
「い、いよ。阿部君になら…私の全てをあげてもいい」

もうどうしてこんな状況になったのかどうでも良くなっていた。お互い好意を寄せていたのは確かであり、付き合い始めるのは時間の問題であった。それならばこれはいい機会だと千代は思ったのだ。千代の胸を優しく揉んでいた阿部の手は、下半身に移動する。目的の位置にたどり着くと、優しく千代の蕾に触れる。そして中心を探り当て、その近辺をこすり上げる。

「ひあ…っん」
「篠岡、ここ気持ちいいんだ?」
「…ん、やあ…っ」

千代の反応に気を良くしたのか、指をゆっくりと突き立てた。先ほどとはまったく違う快感に千代は体をビクッと震わせ、阿部の首に腕を回す。そんな彼女を見て阿部は優しく微笑み、額にキスをした。

「篠岡、すきだ」
「わ、たしも、すきだよ」

お互いに想いを伝えることができて、二人は笑いあった。すると阿部はそのままぽすっと千代の首に顔をうずめ、動かなくなった。千代が呼びかけるが返事はない、少し体制を変え阿部の顔を覗くと彼は眠っていた。

「…ふふっ。かわいい寝顔」


ブランデー入りにはご用心

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2011/02/14:バレンタイン企画



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