2月14日はバレンタインデー。男子も女子も朝からそわそわして、目当ての異性の様子をチラチラと見ている。いつ渡そうかとか、何て言って渡そうかとか、考えることはいっぱい。渡す前から胸がいっぱいになり、苦しいという女子だっている。織姫もその中の一人だったりする。
(昨日頑張って作ったんだもん…絶対に逃げたりしない!)
そう胸に誓い、タイミングをうかがっていたのだが、中々渡せそうにない。一護の周りには、たくさんの女子が群がっている。私のを貰ってだの、他の女のを貰わないでだの、かなりのモテっぷり。そういえば、と織姫は最近女子が一護の噂をしていたことを思い出した。
『最近黒崎君優しくない?笑顔も増えたし、笑うと結構可愛いよね』 『あ、それ思った。何気かっこいいよねー』 『バレンタインのチョコ、黒崎君に渡そうかなあ』 『それいいかも!』 『えー、真似しないでよー!』
(そうだよね、黒崎君かっこいいし、優しいし…モテるのも当たり前)
はあと織姫が小さくため息をつくと、後ろから話しかけられた。振り向くとその人物は、今さっきまで女子に囲まれていた一護だった。
「く、ろさき君。どうしたの?」 「ああ、いや。井上が珍しく落ち込んでっからよ…また悩んでるのかと思って」
照れくさそうに頭をかきながら、そう言ってはにかむ一護に織姫も笑った。大丈夫だよ何でもない、そう言うが一護は信じていないようだ。今までの織姫がしてきたことを思い返せば、無理もない。一護は織姫をじっと見つめ、何か言いたげに口をもごもごしている。
「さっきから口もごもごしてるけど…、何か食べてるの?」 「ち、ちげーって。その、何というか、チョ、」 「チョ?」 「チョ、その…チョコ。今日バレンタインだろ?だから、なんつーか…」
織姫に中々思っていることを伝えられない一護に内心クラスメイトはやきもき。この二人が両思いなのはクラスメイトはもう知っている。知らないのは当の本人達だけなのだ。どうしてこんなにわかりやすいのにお互いに気づかないのか。毎日もやもやした気持ちで二人を見守っているのだ。
「井上からチョコが欲しいっつーか…他の女じゃ意味ないんだ」 「…そ、れって?」 「そのな、あー…つまり、井上が…好きだ」 「…っ」
その瞬間織姫の目からは涙がこぼれていて、一護は慌ててハンカチを取り出す。そして優しく涙を拭うと織姫は笑顔で言った。
「私も、ずっと黒埼君が好きでした」
愛を運んだチョコレート
−−−−−− 2011/02/14:バレンタイン企画
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