寿は野球が上手くて、頭も良くて時々羨ましく思うことがあった。ほんとに、時々、ほんの少しだけ。俺には俺の野球があるし、勉強は…まあ置いといて。それに今は勉強だってそれなりに出来るようになってきてる。清水が時間が許す限り、教えてくれるからだ。
「本当意外だな、清水が勉強できるとか」 「失礼な奴だな。私そこそこ成績いいんですから」
順位は、って聞いて帰ってきた答えは「学年で5位」しかも余裕の表情で。そこそこどころじゃねえっての、頭良すぎだろ。今思い出してみれば、清水は毎時間ノートちゃんと取ってたな。当てられても必ず正しい答えを書くことができて、困っていることなんてなかった気がする。…俺が馬鹿すぎるだけ、なのか?
「確かに吾郎君はもう少し…かなり勉強した方がいいかもしれないね」 「ちょっと待て寿!今言い直したな、さりげなく馬鹿に…っ」
文句の一つでも言おうと思ったけど、確かにそのとおりだから何も言えねえ…。勉強せずに野球ばっかやってたんだ…こんな頭なのは仕方ねえって。何かむなしくなってきた。
「でも、清水さんに教えてもらってばかりじゃ男として、情けないよ」 「…だ、よな」 「吾郎君にしっかりして貰わないと困るよ僕も」 「どういう意味、だ?」 「今のままじゃ僕が貰っちゃうよ?清水さん」
は、い?今何て言ったんだ寿は…貰う?誰が誰を貰うって?『今のままじゃ僕が貰っちゃうよ?清水さん』寿は、清水のこと好きだったの、か?そんなこと、あるわけねえ。清水みたいな色気もゼロで乱暴で暴力振るうような男女を?で、も素直なところとか、試合に負けて隠れて泣くところとかそれなりに可愛いとこはあ、る…って何言ってんだ俺!清水は幼馴染、それ以下でもそれ以上にもならない、はず。
「やっと自覚した?吾郎君」 「自覚?」 「清水さんのこと好きなんでしょ?」
ありえねえっての、俺が清水を?
「じゃあ、僕が貰っても問題ないよね?」 「駄目だ!」
はっ?今の何だよ。駄目って何が駄目なんだ?清水と寿が付き合うのがか?あいつが誰と付き合おうが俺には全く関係ないってのに。俺と清水は別に特別な関係じゃねえ、ただの幼馴染。じゃあこの胸の痛みは何だよ。これが、恋、か?
「全く素直じゃないね吾郎君は。でも清水さんは譲らないよ」 「…寿のおかげで自分の気持ちにやっと気づいたぜ。俺だって清水が好きだ、俺以外の男には渡さない」 「うん、それでこそ吾郎君」
俺と寿の新しい戦いが始まる。
「友達」でも油断しないで
title by 恋したくなるお題
−−−−−− ▽10万打:匿名さん リクエストありがとうございました。
|
|