!パラレル注意・吸血鬼とシスター設定
皆が寝静まる深夜2時。シスター長の命で、出雲は夜の見回りをしていた。当番制であるため昨日見回りをした出雲は次の見回りは一か月後のはずだが、体調を崩した同室のシスターの代わりに見回りをしていた。ペアで行うはずの見回りは人数の関係で一人で行うシスターもいる。同室の彼女の場合は一人で行っていたらしかった。
2階から1階に向かって階段を下りていくと、閉めたはずの扉が数センチ開いていることに気づいた。恐る恐るそっと扉に近づき、扉を開けばそこには鋭く瞳を光らせていて、黒いマントを羽織った青年が立っていた。全身黒で統一しているため、桃色の髪がとても目立つ。出雲は恐怖を感じていることに気づかれないように強気で「あんた誰?」と聞けば、青年は声を出して笑った。先程までの鋭く光らせていた瞳は、優しそうな瞳をしていた。優しく微笑む青年には、その恰好は不釣り合いに出雲は思えた。
「今日のシスターさんはかわええ子でラッキーですわ。俺と夜のデートでもどうです?」
口を開いたかと思えば軽い口調でデートのお誘いをしてくる青年。出雲がこれでもか、というぐらい嫌そうな顔をしたにも関わらず、その青年は出雲の手を取り暗い茂みに向かって走り出した。茂みの中は夜の生き物であるコウモリがたくさん飛んでいる。出雲は恐怖のあまり悲鳴を上げるが、青年はスピードを落とそうとはしない。それどころか、もっとスピードを上げて走るのだ。わけが分からず涙がこぼれそうになった瞬間、突然青年は立ち止った。振り向いた彼は最初と同じく、鋭く瞳を光らせて出雲を見つめていた。瞳の色は鮮やかな真紅に変わっていた。口元からちらりと見えたのは、左右から生えた鋭い牙。その牙が見えた瞬間、出雲は思い出した。最近シスターが数人行方不明になったことを。その行方不明になったシスターは全員一人で見回りをしていたということ。しかし今更遅い。もう、気づけば首筋に青年は牙を立てていた。
「堪忍なぁ…シスターさん」
そう謝る声が出雲にはかすかに聞こえたが、すぐに意識を手放してしまった。静寂に包まれる森の中、吸血鬼である青年の血を啜る音だけが響いていた。
奪われたシスターの血
−−−−− 25万打フリー小説
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