千鶴が真っ青な顔をして沖田達の前に現れた。昨日の千鶴とは明らかに違い、血の気のない顔をしている。沖田が真っ先に千鶴の異変に気づいて駆け寄り、そして「大丈夫?」と声をかけた。千鶴は心配かけないようにと、いつもの笑顔を浮かべて頷いた。沖田は何度もこのような会話をしてきたから分かっていた、千鶴が無理していることぐらいは。無理をして笑っているときは、相当苦しいとき。千鶴が今どれほど苦しいのかは沖田は分かっていた。沖田は一つため息をつき、それから千鶴にゆっくり休むように言った。だが、千鶴は首を横に振るだけで「はい」とは言わなかった。

「千鶴ちゃん…僕の言ったことは素直に聞いた方がいいと思うよ」
「いくら沖田さんの言葉でも、できません」

沖田の言うことを今まで一度も拒んだことがない千鶴が今日、初めて沖田の言葉に従うことを拒否したのだ。それは沖田にとって、とても衝撃的な出来事で、少しの間ショックから立ち直れずにいた。しかしすぐに我に返り、千鶴にゆっくりと微笑んで見せた。その笑顔から感じる無言の圧力。千鶴は寒気がした。

「じゃあ、僕も一緒に休もうかな」
「え、あ、私は休みませ「僕抱き枕がないと眠れないんだよね…だから千鶴ちゃん」

千鶴の言葉をさえぎった上に、意味深にそこで口を閉じる沖田。もうそれが何を意味しているかは千鶴には理解できた。ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる沖田に千鶴は恐怖を感じずにはいられない。先ほどと似たような寒気を感じ、思わず身震いすると沖田は「千鶴ちゃん」と名前を呼ぶ。

「やっぱり体調悪いでしょ。ほら、部屋に戻ろうよ」
「あ、別に、体調じゃなくて、その…」
「分かってるよ、女の子の日でしょ。そういう日は無理しちゃ駄目だよ」

ニコリと嫌なほど笑顔の沖田に、千鶴はなぜ知っているのか、という疑問も聞くことができずに上機嫌な沖田の背中を見つめた。


抱き枕はきみです

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リクエストありがとうございました。
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