1月上旬、寒さに磨きがかかり凍えるような寒さが雷門イレブンを襲った。自然とマネージャー達も厚着になり、最近はマフラーで首元まで防寒対策を施すほどだ。前までは制服を着て脚を出していた夏未も、今ではジャージが当たり前、スラリとした綺麗な脚は拝めなくなった。それに不満を唱え始めたのは、もちろん雷門イレブンだ。「雷門の生脚が見られないのは辛い」そう誰かが言った。するとそれに続き他の選手たちも口々に言い始める。「雷門の生脚が見られない」というのは、雷門イレブンの士気を下げるほどの重要なことらしかった。

雷門イレブンはこの問題をどう解決するかを話し合うための会議を開くことにした。サッカー部に関わっていない者たちからすれば、どんなにバカらしい会議に思えるだろう。しかし彼らは至って真面目なのだ。

「…ということで、雷門の脚を取り戻してみせるぜ会議を始めたいと思う」
「何がというわけなんd「それで具体的には何をするの?」

豪炎寺の真面目なツッコミを、氷の上を滑るかのように華麗にスルーしたのは吹雪だ。この会議を提案した本人でもある。吹雪は会議を中止にもっていかせないために、豪炎寺には口を出させないつもりらしい。表面上は爽やかな女子受けしそうな笑顔だが、瞳は笑っていない。豪炎寺は何を言っても無駄なことに気づき、この会議には一切口を出さないでおこうとこのとき思ったらしい。

「雷門がジャージを着るのはつまり寒いからだろう?」
「あぁ、だったら、寒さをなくせばいいってことだ」

不動が何かいい案があるのかニヤリと笑って言った。鬼道は不動を見て「だったらどうする」と尋ねる。ゆっくりと開かれる口から、一体どんな案が提案されるのだろうと、ドキドキと胸を高鳴らせながらその言葉を待つ。だが、その提案はあまりにも不平等すぎた。たった一人だけしか得をしないものだったのだ。

「だから、俺が雷門を抱きしめて暖めてやるって。それなら制服に戻すこともできる」
「アホかあああ!!」
「え、何でだよ」
「お前、アホか?アホだな。そうか、アホなんだな!」

壊れたようにアホを連発する鬼道を不動は「何こいつ頭おかしいんじゃねえの」と哀みの表情を浮かべる。鬼道はその表情に苛立ち、突然不動の髪をつかんだ。何をするかと思えば、その髪を上に引っ張り上げた。何本かブチブチと抜けた音がしたかと思えば、不動がでかい声で怒鳴りつけた。

「いって!いてえって鬼道君!」
「お前が笑えない冗談を言うからだ。雷門の気持ちを考えろ」
「鬼道の言うとおりだな。雷門だってそういうことは好きな奴としたいだろう」

豪炎寺が鬼道の言葉に賛成した直後、鬼道はとんでもない発言をした。

「不動じゃなく、俺に抱きしめられたいに決まっている」
「おいいいい!決まってねえよ!お前何言ってんだ!」
「…お前が何を言っている?」

染岡が突然大声でツッコミをいれると鬼道は染岡をうざったそうに見た。その表情を見た瞬間「鬼道不憫」と少し切なくなった。何故なら普段夏未に相手にされない分、何としてでもこの手で夏未を抱きしめてみせる、と闘志に漲っていたから。だが、本人にこのことがバレたらどんな罰を受けるのだろうか、そのことを考えた瞬間染岡は夏未のことが恐ろしくなった。雷門のことだろうから、ひどく厳しい罰だろうと思い色々と考え始めた染岡にはもう誰の声も届かなくなっていた。

「さて、夏未さんを誰が抱きしめて温めるか決めよう」
「え、なにそれ決定事項?!」
「うん、そうだけど。半田くんは嫌なら参加しなくていいよ。ていうかすんな」
「えぇええっ。今、一瞬口が悪くならなかった?!」
「ううん、気のせいだよ」

吹雪の爽やかな笑顔に一瞬「気のせいか」と思いかける半田だが、瞳の冷たさに気のせいじゃないことに気づいた。吹雪の表面上だけの笑顔に半田は鳥肌が立った。

「ではここは、天才ゲームメーカーである俺がいこう」
「それ関係ないからね鬼道くん。だったら僕がいくよ」
「公平にジャンケンでもすりゃあいいだろうが」
「ジャンケンより、王様ゲームにしないかい?」
「何で男だけで王様ゲームしなくちゃいけねえんだよ。気色悪ぃ」

不動のその一言で今度は乱闘になった。誰かと誰かの肩がぶつかれば、目の前の相手ではなく肩にぶつかってきた相手につかみかかり、誰かの足を踏めばその踏まれた相手が襲い掛かってくる。一向に終わる気配のないこの会議は、数十分後に現れる本人の登場により終わりを迎えることになる。


「…全員、グラウンド50周よ!!」
「「は、はい!!」」


俺達健全な男子中学生ですから
(好きな女子のことばかり考えるのは当たり前!)

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▽20万打:刹那さん
リクエストありがとうございました。
(120203)



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