!注意・朝起きたら猫耳としっぽが生えちゃった秋ちゃんのお話
…無駄に長い、キャラ崩壊



気持のいい日差しにほんの少しまぶしさを感じながらも、ベッドから起き上がり制服を着て姿見で全身の確認をした秋は、呆然とした。起き上がってすぐには気づかなかった秋は、このとき初めて気づいたのだ。頭にはひょっこり可愛らしい猫の耳が生えており、制服のスカートからは猫の尻尾が出ている。寝ぼけているのかと両頬をつねってみるが、感じるのは痛みだけで、夢ではなく現実に起こっていることだと秋には分かった。しかし、なぜこのような事態になったのかは秋には全く分からない。前日に何か変わったものを食べただろうか、何かしただろうか、昨日の自分の行動を思い出してみるが、これといって原因らしいことは見つからない。秋はせっかく着替えた制服を脱ぎ、春奈に今日は行けないと伝えようと携帯電話を手にした。春奈の携帯に電話を掛ければ元気な声が電話越しに聞こえてくる。

「木野先輩、どうしました?」
「あ、あの、ね、実は…」

−−−−−−−−…

「ええっ!猫耳と尻尾が生えた?!」
「…信じてもらえないと思うけど、朝起きたら生えてて…」

こんな馬鹿らしい話を信じてもらえるか分からないが秋は春奈だけには本当のことを言った。練習を休むなら真実を伝えるべきだと思ったからだ。結果、春奈は当然のように驚いて、その後無言になった。呆れられたのか、それとも馬鹿にするなと怒っているのか、秋がドキドキしながら次の言葉を待っていると、春奈は木野先輩!と、大きな声で秋を呼んだ。電話越しでも分かるぐらいの大声、多分春奈の周りにいる者には春奈の電話相手が秋であることが分かっただろう。

「とりあえず今すぐ来てください!」
「え?あの、春奈ちゃん?いまの話、聞いてた?」
「聞いてました!だから、来てほしいんです!」

今の話を聞いていたら来てくださいなんて言う流れにはならないはずだ。だが春奈は来ててほしい、とその意見を変えることはなかった。断固としてその意見を譲らないようだ。秋はこのまま話していても無意味だと思い、しぶしぶ承諾した。幸い今日は休日である。普段よりも校内にいる生徒の数は少ない。何とか誤魔化せる、そう信じて秋は制服にまた着替えた。尻尾はぐるっと腰に巻きその上からスパッツをはいた。違和感はあるがこの際仕方ない。問題は耳だ。私服ならば帽子をかぶれば問題ないのだが制服に帽子は違和感がある。散々悩んだがこれといって思いつかず、結局帽子をかぶっていくことにした。

恐る恐る部員にバレぬよう、春奈に話しかけることに成功した秋はすぐに部室へ連行された。部室の扉には「入るべからず」の文字。どうやら春奈は秋の猫耳と尻尾を見たいようだ。秋は恥ずかしいから嫌ですと何度も拒否をするが、最終的に無理やり帽子を取られスカートもめくられそうになり、観念した。

「最初から見せてくれれば良かったんですよ」
「だ、だって恥ずかしいじゃない。猫耳に尻尾なんて…コスプレみたいで」
「いいじゃないですかコスプレ…!私木野先輩に猫耳と尻尾が生えたって聞いて、メイド服やセーラー服…その他もろもろ借りてきたんですよ!」
「ええっ!?」

秋が驚きの声を上げたときにはすでに春奈はメイド服やセーラー服などを小さな机の上いっぱいに広げていた。一番上に置いてあるメイド服はかなり丈が短いもので、フリルが裾にたくさんついており胸元は少し開いている。ご丁寧にニーハイに靴もそろっている。秋はこれらの服を自分が着たところを想像してみる、だがあまりの恥ずかしさに数十秒ともたなかった。メイド服を着た自分を頭の中から追い出すためにブンブンと頭を振って、春奈をまっすぐ見つめていった。お断りします。

「そういうわけにはいきません。これを借りる際にある約束をしてしまったのです」
「それは、どういう…?」
「コスプレ服を貸す代わりに、それを着る子の写真を撮ってくるように、と…」
「やだもう!何でそんな約束をしちゃったの?!ねえ、春奈ちゃん…!」

すでに涙をこぼしている秋に春奈は容赦なかった。無理やり制服を脱がして、メイド服を着せたのだ。今の制服姿でも可愛いんですけどね、なんて嬉しそうに笑いながら脱がす春奈は今まで見たこともないような笑顔だと秋は思った。全て着替え終わり、春奈は突然メイク道具を取り出した。

「仕上げにお化粧しますから、おとなしくしてくださいね」
「も、う無理…!このままで十分だと思うの…だから、ね?写真撮って早く終わらせましょう?」
「何言ってるんですか。今のままでも十分可愛いですけど、リップは絶対に塗らないとだめですよ。思わずキスしたくなるメイドがテーマなんですから。」
「え、ちょ、テーマって…?!春奈ちゃん、落ち着きましょう。ほら、深呼吸」

秋の気持は全く伝わらず、秋の唇に遠慮なく薄桃のリップが塗られた。鏡を見せられると唇はプルルンと艶やかに光っていた。春奈はその唇をうっとりと見つめたあと、その唇に自分の唇を重ねた。数分何が起こったのか理解できなかった。だがはっと我に返り春奈を見れば春奈はにやりと笑って言う。

「あまりにもおいしそうだったんで。…そんな顔して、もう一度してほしいんですか?木野先輩」

(たべられる…!)

危機を感じたときだった、ガラと扉が開きたくさんの声が耳に入った。助かったと思った秋だが今の自分の格好を思い出し、助かってないじゃないと冷や汗をかいた。寧ろもっと危険な状況なんじゃないかと、秋はブルブルと震える。

「あ、あ、ああああき!!!そ、その恰好…!」
「いやああ!見ないで!お願い!」

想像通り部員たちは目の前のメイド姿の秋に驚いてポカンと口を開けたまま固まっている。唯一円堂だけは声を出すことができたが、上手く言葉が出てこないらしい。顔を真っ赤にして秋を見つめる。秋は恐る恐る部員たちの方を向けば、部員たちは秋のあまりの可愛さに直視できず視線を逸らした。秋はそれを「思わず視線を逸らしたくなるほど似合ってない」と勘違いをしたらしくどよんと暗くなる。後ろ向きに考え始めた秋を傍にいた春奈が立たせて、言った。

「どうですか、みなさん!思わずキスしたくなるメイドがテーマなんですけど、思わずそれ以上のこともしたくなるような可愛さですよね☆」

☆をつけてふざけたように笑う春奈だが部員は春奈の言うとおり、キス以上のこともしたくなるよな、と思いさらに秋を直視できなくなる。すらりとした脚がミニスカートから覗き、そしてパタパタと左右に動く尻尾がなんとも魅力的だ。胸元は少し開いているため、成長しきっていない小さな胸のかすかな谷間が見えている。誰かが鼻血を出して倒れたの合図にその後バタバタと人が倒れていく。

「え、い、一之瀬君っ!大丈夫?!」
「ちょ、今秋に近づかれたらやば…、ぶ…っ」
「ああっ!い、一之瀬君!!」

秋が抱き上げた瞬間に更に血が出てきた。秋は混乱してあたふたしていると風丸が秋の隣に座り、肩にジャージをかけた。そして下がっていろと言って、一之瀬を抱え上げ隅にあったいすに座らせた。秋がありがとう、と笑って御礼を言うと風丸は顔を真っ赤にしてああとだけ呟く。周りにいた男どもはチッと舌打ちをして風丸を睨みつける。

「木野、風丸のジャージより俺のジャージを貸してやるから脱げ」
「不動君、ありがとう。でも風丸君が貸してくれたから…」

笑顔でそう言う秋に無理強いすることもできず、仕方なくその場に居た者は秋に自分のジャージを着せることを諦めた。

「いーや!!俺のジャージを着るべきだ!」

突然扉が開け放たれ登場したのは南雲や涼野、源田や佐久間だった。全員どこからか情報を手に入れたのか、手にはバッチリカメラを持っていた。それもかなり高画質のものだ。何を撮るのか、なんて愚問だ。早速南雲が秋のメイド姿をカメラにおさめていた。誰もが驚きのあまり言葉を失っていたときに、鬼道はすぐに我に返り、すぐに各自の学校へ戻るように行った。だが言うことをきく者は誰一人おらず、勝手にメイド秋の撮影会を始めた。

「木野、こっち向いて!あ、できれば首傾げて」
「座って上目遣いくれ。そうそう…すごく可愛い」
「せっかく猫耳なんだから、猫のポーズをとってくれ」

秋は言われるがままにその要望に応じるが、内心早く着替えたくてしかたない。その様子を見かねた風丸は秋をかばうようにして立った。耳打ちで秋に円堂たちの後ろに隠れているように伝えた。秋は頷いて、すぐに円堂たちの後ろに隠れた。風丸はそれを確認すると、こう言った。

「俺と木野は付き合っている。だからこれ以上木野を困らせないでやってくれ」

空気が凍りついたような気がした。そしてだんだんと感じる殺気、他校だけではなく円堂たちまで今にも襲い掛かってきそうな気迫だ。風丸が一瞬怯んだ隙をつき、男たちはいっせいに襲い掛かった。秋はその様子をどうすることもできずに、ただ立ち尽くしていた。


要するに皆彼女が好き

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▽20万打:無添加さん
リクエストありがとうございました。
(120112)



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