普段から体調を崩すことなんてない相田リコが風邪で倒れたとの知らせを受けた部員たちはその日一日思い通りの練習が出来ずに、何となくもやもやとした気分で岐路に着いた。その中でも火神はとくに、もやもやとした気分で帰宅していた。それもそのはず、相田リコは火神の彼女であるからだ。立場上誰にも言うことはできないが、彼らは周りの人間の隙をついて愛を育んでいる。その愛を育んできた、いつも火神を傍で支えてきてくれた大切な彼女が倒れたとあれば、心配するのも当たり前。火神は少し考えた後、すぐに方向転換をした。

(…お見舞い、行くか)

***

そこそこ大きな建物の前で火神は立ち尽くしていた。家の前まで来たというのに、今度は入るべきか帰るべきかと悩み始めたのだ。かれこれ10分は家の前で悩んでいる。それを不審に思った近所の住人が警察に通報しようか真剣に悩み始めたとき、相田家の玄関扉が開いた。中から出てきたのは、リコ大好き人間であるリコパパだ。

「お前、何してんだ。リコの見舞いか?」
「あ、は、い」
「ならしばらくリコの様子見ててやってくれねえか。用事ができて出かけることになっちまってリコの看病ができねえんだわ」
「俺が、ですか」
「お前以外誰がいるんだ?あ、けどな…リコに手出したらブっ殺すぞこら」

それが人に物を頼む態度か、なんてつっこみは火神には恐ろしくてできなかった。ただ、「分かりました」と頷きリコの下へと向かう。そして初めて入るリコの部屋の前で一度立ち止まり大きく深呼吸をする。いくら風邪の看病という健全な理由だとしても、高校生の男女が同じ空間に二人きりということに火神は緊張していた。何度深呼吸しても胸のドキドキは止まらず、先ほどよりも心拍が早くなったような気がした。いくらやってもキリがないと思い、勇気を出して扉を開ければ熱でうなされているリコがいた。

(すげえ汗。汗拭いたほうがいいか)

すぐ傍においてあったタオルを手に取り額の汗をぬぐってやるとリコはうっすらと瞳をあけた。呼吸は荒く、早い。何か喋りた気に口をパクパクと開閉させていることに気づく、ベッド近くにより耳を傾けた。

「ありがとう」
「いいスよ別にお礼なんて。たいしたことしてねぇ…すから」
「そんなことないわ、だって、わざわざ来てくれたじゃない」

そう言ってリコは火神の頬をそっと撫でて微笑んだ。火神はその笑顔にきゅうと胸を締め付けられた。それと同時に少しばかりしかなかった理性も奪われた。

「…あの、体も拭かせてくれ、です」
「か、からだ?いいわ、そこまでしてくれなくて」
「いいから寝ててくれ、です。体も拭かないと熱また上がるスよ?」

そこまで言ったときにはもうシャツのボタン2つが火神の手によって取れていた。ひらりとシャツがはだけ、可愛らしい小ぶりの胸が見え隠れしている。苦しいからなのか、それとも普段からなのかはわからないが、下着はつけていないようだった。それだけでも火神の下半身は熱くなっていく。体はリコを受け入れられるようにどんどん熱を持っていく。火神はまず小ぶりな胸の突起に優しく口付ける。リコは突然のことで驚き、色気のない悲鳴をあげる。

「か、かかか、火神く、んっ?」
「何スか、カントク」
「何、してるのかしら?」
「今からカントクを抱くんスけど、何か問題でも…?」

それが当たり前のことだとでも言うようにきっぱりと言う火神にリコは何も言い返せなかった。火神はそれを承諾の意味で受け取ったのか、続きを始める。

「だ、めよっ。やめ、なさい!」
「嫌ッス」

リコの必死の制止の声を無視して火神は行為を続けた。その数分後に恐ろしい形相をしたリコパパが現れるとも知らずに――…


理性は簡単に吹き飛ぶもの
title by Aコース

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▽20万打:頼亜さん
リクエストありがとうございました。
(120124)



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