プロになってから数ヶ月、俺は彼女と偶然出会った。

「あ。泉さん、こんにちは!」
「こんにちは、清水さん。今日の試合見に来てたんだ?」
「はい!泉さんかっこよかったですよ!」

そう言って俺の手を握って笑いかけてくるのは、清水さん。茂野の元クラスメイトでそしてチームメイトでもあるらしい。そんな彼女と初めて顔を合わせたのは彼女が茂野を追って海堂に来たとき。彼女は大きな門の前で泣きそうな瞳で寮を見ていた。入ろうと何度もして、けど結局引き返す。そんなことを繰り返ししていた。しびれを切らした俺が声をかければ彼女はひっと声をあげて驚いた。振り向いた彼女はまっすぐな綺麗な瞳をしていて、俺は一瞬でその瞳に魅了された。一目惚れってあるんだ、ってそのとき思った。俺はとっさに携帯を取り出して、電話番号とメアドを聞いていた。彼女は最初は驚いた顔をしていたけど俺が茂野のチームメイトだと分かると安心したらしく、簡単に教えてくれた。そこから俺と清水さんのメールのやりとりが始まった。今こうして気楽に話せるのはメールのおかげだ。

「へえ、惚れ直しちゃった?」
「あははっ。そうですね、惚れ直しちゃいます」
「清水さんは、今でも茂野が好き?」

清水さんの笑顔を見たら自然とそんなことを聞いていた。今まで彼女の心の中にいたのは茂野だ。けど今一番近い位置にいるのは俺だ。だから、少しくらい期待したっていいだろ?清水さんが、俺を選んでくれる可能性は否定できない。俺は、彼女の言葉を色んな意味でドキドキしながら待っていた。そしてゆっくり開いた口から発せられた言葉に俺は言葉を失った。

「今でも好きです」

ああ、やっぱり俺じゃ茂野には敵わないのか、なんて思っていたら彼女はニコリと笑って続きの言葉を発した。

「今の好きは、友人として。恋愛としてではないです」
「じゃ、じゃあ他に好きな人は?」
「……目の前にいるあなたです。…すいません、やっぱり忘れて下さい今のは」

迷惑なわけがない、俺だってこんなに大好きなのに。好きで好きで仕方ないのに。俺は思わずその場で清水さんを抱きしめて、キスをしていた。彼女は頬を真っ赤に染めながらも、抱きしめ返してくれた。


やっと実った恋に俺は笑いかけた

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▽20万打:nanaさん
リクエストありがとうございました。
(110930)



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