今更どうしてって思うけれど、跡部さんに向けられる熱い視線に耐えられなかった。
跡部さんはかっこいい、誰に聞いてもそう答えると思う。だったら跡部さんに思いを寄せる女の子だってたくさんいる。最初から分かっていたはずなのに。私は、跡部さんがとられてしまうんじゃないかって怖くなった。跡部さんは私が好きって言って告白してくれた。けれど、その気持ちは今でも同じなのかと不安になる。私と跡部さんじゃ釣り合ってないから。けれど自分の気持ちに嘘はつけないから、跡部さんが女の人に声をかけられるのを見て居てもたってもいられなくなって…気づけば跡部さんの腕にしがみついていた。
「桜乃?」 「私は、跡部さんのことが好きです。…跡部さんは違うんですか?」 「……」
少しのことで妬くなんて、お子様って思われたかもしれない。もっと余裕のある女性でいた方がいいのかもしれない。けど、私にはそんなことはできないから。ありのままの自分を跡部さんに見てもらいたいから。繕ってまで跡部さんの傍にはいたくない。だから、答えてください跡部さん。私のことをどう思ってるんですか?
「…どけ」 「え、っ?」 「俺はこいつ以外興味ない。何だその厚化粧。そんなに塗りたくらなきゃ自信が持てないのか?…こいつは化粧なんかしなくても十分綺麗だ。俺はこいつしか愛したくない。だからさっさとどけ」
声をかけてきた女の人達は、怒りと羞恥で顔を真っ赤にして走ってどこかへ行ってしまった。私は呆然としながら跡部さんを見ると、目が合ってしまった。恥ずかしさから俯きそうになる私の顎を跡部さんはくいっと指で持ち上げてきた。外せない視線。鋭い瞳に見つめられて、言葉が上手く出てこない。思い切って、名前を呼ぼうとしたが跡部さんに先に呼ばれた。
「桜乃、お前は綺麗だ」 「あと、べ、さん?」 「俺はお前だけを見ている。お前だけを愛している」 「私も、です」 「ああ、だからこれからも俺だけを見ていろ。俺のことだけ考えろ。いいか?」 「は、いっ!」
そう私に言ったときの跡部さんの表情はとても優しくて、やわらかくて。私は思わず笑みをこぼした。嬉しい、今はそれしかない。跡部さんの気持ちがとても、嬉しい。跡部さん、大好きです。
嬉しい、今はただそれだけ (あー…その、な。感動的な話をしている最中に悪いが、) (どうしました?) (胸が当たっているんだが…誘っていると受け取ってもいいのか?) (きゃっ、や、ち、違います!) (…可愛い反応すんじゃねえよ。我慢できなくなんだろうが)
−−−− ▽20万打:bekoさん リクエストありがとうございました。
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