できることなら、その笑顔は俺に向けて欲しかった。他の男ではなく、俺に。俺だけに。
なあ井上、誰の為に笑ってんだ?
「あのね石田君、今日はねあんこをいっぱい使ったあんこおにぎり持ってきたんだー!」 「へ、へえ、井上さん…流石だね」
俺には見せたことない笑顔、楽しそうで嬉しそうで、綺麗で。あまりにも綺麗に微笑むから、何だか急に苦しくなった。俺には絶対に向けてもらえないだろう。その笑顔は、アイツのものだから。
井上の笑顔は、石田のものだ。
けれど井上をそう簡単には諦めることなんてできるはずもなく、俺は未だに井上の姿を目で追ってしまう。忘れよう忘れようと思っているのに、気づけば井上を目で追っていて、見つけるとすげえ嬉しくなる俺。いい加減諦めればいいのに、そう思えば思うほど諦められなくなって。情けねえ、何て諦めの悪い男だ。なんて自分で自分に笑ってみた。
「黒崎く、ん?どうしたの?」 「俺は、井上のことが、好きだ。どうすれば井上の心を手に入れることができるんだ?」
石田、わりい。お前はいい奴だ。だから井上との仲を壊すなんて、したくなかった。できなかった。井上を近くに感じれば感じるほど、もっと傍にいたくなってもっと触れたくなって、思いは溢れた。いくら謝っても許されることじゃねえことは分かってる、けど、井上が欲しくてたまらない。
「井上、俺にお前の心をくれるか?」
ねぇ君は、誰の為に笑うの、 title by 累卵
−−−−− ▽15万打:小枝さん リクエストありがとうございました。 (110519)
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