別にあいつが誰といようが俺には関係ねえ。そう思っていた。俺は束縛なんてしたいと思わないし、束縛するなんてありえない。アホ女にそこまで執着はしてないと思っていた。そう思い込んでいた。あいつが傍にいないと落ち着かない、イライラする。どこで何をしているのか気になって仕方ねえ。もし俺以外の男と一緒にいたら、とか悪い考えばかりが俺の頭を彷徨う。気分が悪い。吐き気がする。

気晴らしに外に出かけた俺は、後悔した。外に出たことを。見てしまった、見たくもないものを。山本が泣きじゃくるハルを優しく抱きしめていた。背中に回された手が、近すぎる距離が、ハルの泣き声が、全てが俺を狂わせる。苛立たせる。胸が苦しい、息ができない。苦しい、苦しい苦しい苦しい。

「ご、めんなさい。ハル…、ハルは山本さんを傷つけることしか、できないみたいです。ごめんなさい…ごめんなさ、いっ」

聞こえてきたのはハルが必死で謝る声。会話の内容がまったく分からない。

「ハルは…獄寺が好きなのな。俺が困らせたのが悪いって。ハル、ごめんな」
「山本さん、あの、お気持ちは本当にうれしいです。ありがとう、ごさいます」

俺が、好き?ハルが泣いてるのには、俺も関わってんのか?駄目だ、考えても分かんねえ。ハルが泣いている理由も、山本が苦しそうに笑っている理由も、全てが理解できねえ自分に腹が立つ。ハル、お前は今何を考えてるんだよ、なあ。

「言ったらスッキリした、ハルありがとな。気持ち聞いてくれて。…ほら、行ってやれ。獄寺のとこにさ」
「ご、くでら、さん?」
「ん。ハルの後ろにいる」

俺の方を向いたハルは一瞬で顔を赤くして俯いた。耳まで赤くしたハルはあまりにも可愛くて、小柄なハルがとても小さく見える。ぶるぶると怯える小動物のようで、瞳には涙をためて黙って立っている。下に垂れた耳まで見えてきそうなぐらいだ。

「…ハル」
「…………」
「ハル。ハルさん、ハルちゃん、ハルさま」
「…………」
「アホ女」
「アホ女じゃないです!ハルはハルです!」
「ふは、っ。アホ女には反応するんだな」

俺がそう言うとむうと頬を膨らませるハル。無意識にやったことだろうが想像以上に破壊力がある。可愛すぎて、抱きしめそうになるが必死でおさえこむ。

「ハル、さっきの会話の内容だけど」
「は、はひっ!」
「俺も好きだ。………あああやっぱり今の言葉忘れろ。すぐにだ!」
「む、無理ですよっ!!」
「人間やればできるんだよ!」


やっぱり最後には笑顔で

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▽15万打:まりさん
リクエストありがとうございました。
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