桜が満開の季節、高校に入学したばかりの千代の隣には同じ中学校だった栄口が立っていた。

中学の時はそれほどかかわりはなかったが、同じ高校を受けると分かったときから少しずつだが話すようになった。そこで初めて栄口は、千代が野球が好きなことや知識が豊富であることを知った。そして更に二人の距離は近づき、栄口は自分の思いを伝えることを決意する。高校の入学式が終わったあと、千代を呼び出して自分の思いを伝えた。千代の答えはOKだった。栄口は思わずガッツポーズをしそうな勢いだったがそれを抑えて、嬉しそうに笑う。すると頬を染めた千代も嬉しそうに笑った。

***

「きれいだね、桜」
「うん、本当きれいだね。桜吹雪って言うんだよね、こういうの」

千代が両腕を大きく広げ、栄口の方を見ながら笑顔でそう言う。その姿が一瞬桜吹雪で見えなくなったとき、栄口はヒヤリと背筋が凍った。千代がそのままどこかに行ってしまいそうな気がしたから。そんなことあるわけないのに、何故か不安で不安で仕方ない。気づけば栄口は千代が立っている場所に向かって走り出していた。

「篠岡!」
「え、さ、栄口、く、ん?」

名前を呼んでいつの間にか抱きしめていた。強く、どこかへ行ってしまわないように。
千代は突然のことに驚き声がでなかった。けれど決して嫌ではなかった。寧ろ嬉しいと思った。

「篠岡、篠岡」
「うん、どうしたの?」
「俺、篠岡が好きで好きで、仕方なくて」
「、っ」
「いつか別れるときが来るかもしれないって思うと、怖くてたまらない」

泣きそうな声で栄口はそう言った。栄口は自分が情けなく感じた。けれど千代は優しく微笑んで、抱きしめ返して、そして栄口の頬に優しく口付けた。栄口は驚き自分の頬に触れた。一瞬何が起きたか分からなかったが、だんだんとそれが何だったのか分かってきて。頬はまるでタコのように真っ赤になった。

「あのね栄口君。いつか別れがくるかもって、言ったよね」
「う、ん」
「私は、栄口君以上に好きになる人なんて存在しないよ?」
「篠、岡っ」
「だからね?私から別れを告げることはないんだよ」
「俺から別れを告げることも、絶対にない、から、」
「うん、じゃあ私たちはずっと一緒だね」

そう言って満開の桜のように、きれいな笑顔を浮かべた千代に栄口も泣きながらも微笑んだ。


私達これからもずっと一緒だね

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▽15万打:あきゅさん
リクエストありがとうございました。
(110722)



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