篠岡さんは犬みたいだ。
デートの途中に姿が見えなくなったと思ったら、ペットショップのウィンドウに張り付いて何かを見ていた。何か自分の好きなものを見つけるとそこにまっしぐら、まるで犬のようだ。俺も篠岡さんの後を追ってペットショップに向かう。篠岡さんは目をキラキラさせて、グレーの毛色が綺麗な猫を見ていた。興奮した様子で、かわいいと何度も言いながら俺に笑いかけた。
やっぱり犬みたいだ。
行動も犬のようだとは思ったけど、優しい色のふわふわのやわらかそうな髪に、クリッと可愛い瞳。外見も犬みたいにふわふわした可愛らしさがある。篠岡さんの方が可愛い。
「…かわいい」 「かわいいですよね、この猫ちゃん。何て種類なんでしょうか」 「いや、猫じゃなくて篠岡さんが」
俺がそう言うと彼女は顔を真っ赤にして目をそらす。その頬の熱を冷ますかのように、目の前の猫をガン見する篠岡さん。本当に、なんでこんなに可愛いんだ。目に入れても痛くないぐらい可愛い。結構重症、だよな。ていうか、篠岡さん中毒?あー…やばいかもしれない。本当はデートだってしたくない、2人きりの時間が欲しいわけで…。というより他の男の目に篠岡さんがうつるのが嫌って言った方が正しい。こんなに自分が嫉妬深いとは思わなかった。はあ。
「島崎さん!」 「あ、な、何?」 「あの、お待たせしてしまってすいません。疲れちゃいましたか?」
ボーッとしすぎた、か。すげえ篠岡さん困った顔してる。
「大丈夫、疲れてないから。それよりどこか行きたいところある?」 「行きたいところ、ですか」
そう言って篠岡さんは腕を組み考え始める。首を傾げてやや上の方を見ている、口は可愛らしくアヒル口になってる。本人は気づいてないみたいだけど。
「…ふはっ」 「どうかしましたか?」 「口、アヒルみたいだなって」
カアッ
そう音まで聞こえてきそうなくらいまた顔を真っ赤にする篠岡さん。もっと早く言ってください、とむうと頬を膨らませながら言う。何その表情、反則でしょ。
「ああ、もうかわいい。本当かわいい」 「え、あ、え…?あ、りがとうございます」
かわいい、ただそれだけ
−−−−− ▽10万打:匿名さん リクエストありがとうございました。
|
|