▽春奈視点


2月14日。この日のためだけに用意したチョコレートがたった今私の足元で見るも無残な姿で発見された。どうやら木暮君がまた皆に悪戯をして怒った皆から逃げ回っているときに机にぶつかって私が置いといたチョコレートを落としたらしい。落ちた時点でもう既にショックだけど、熱でぐちゃぐちゃになった悲惨な姿のチョコを見ると更にショックを受けてしまう。元の形が何だったのか、もう今となっては分からない。

「もうこれじゃ渡せない、か」

ぐちゃぐちゃになったチョコをそっとティッシュで片付け始める私に後ろから誰かが声をかけてきた。泣き顔から無理やり笑顔に戻しゆっくり振り向けばそこには、私がチョコを渡そうと思っていた風丸先輩が立っていた。
どうしたんですか風丸先輩、なんて笑って話しかけると悲しそうな顔をする風丸先輩。
泣きたいのは私の方だというのに。

「音無、泣くな」
「え」

笑顔のつもりだった私の表情は笑顔ではなかったみたいで。

「そんなに瞳に涙を浮かべといて、笑顔を作るなんて無理に決まっているだろう」

そう言うなり私をそっと抱きしめてくれる風丸先輩。抱きしめられた瞬間伝わってくる風丸先輩の温もりに涙がこぼれ落ちた。優しい、風丸先輩。だから好きになったんだ。

「チョコはまた作ればいいから、笑ってくれ」

そう切なそうに呟いた風丸先輩に私はぎこちなくも笑顔を見せると風丸先輩もやわらかい笑顔を向けてくれた。


笑った顔が一番好きだから
(風丸先輩にたっぷりの愛情をこめたチョコレートを)

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2013/02/14:バレンタイン企画
ツツミさんリクエスト



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