▽リコ視点
バレンタインデーだというのに、彼氏にお菓子作りを教わる彼女ってどうなのよ。って自分でも思う。けど火神君にはちゃんと食べられるものを作ってあげたいし、自分の手で作ったものをあげたいから仕方ない。だから火神君にあげるチョコレートを使ったお菓子を必死で作っているわけだけど、これが中々上手くできない。1対1で教わっているのにどういうこと?
「あー…分量間違えてるぜ、です」 「え、嘘!!ちゃんと量ったつもりなんだけど」
目の前のオーブントースターを開けると何ともいえない焦げ臭い匂い。クッキーとは言い難い真っ黒く焦げてしまった物体を取り上げて私は大きくため息をついた。
(これじゃ火神君にはあげられないわね…)
仕方ないからもう一度分量を量り直して作ろうと思い、焦げたクッキーを捨てようとすると火神君が私の手からそれを取り上げる。そんなものどうするんだろうと火神君を見ているとあろうことかそれを口の中に放り込む。美味しくないことは見た目ですぐにわかるはずなのに、どうして、
「カントクが作ったもんは全部オレが食う、です」 「え、で、でも、失敗したものは流石に…」 「けど。オレへの思いが詰まってるんすよね?」
そう改めて言われると恥ずかしいんだけど、まあ詰まっていることには詰まってる。控えめに肯けば火神君は満足そうに笑って「だからどんなに失敗したものでも食うっすよ」なんて口にした。 すごく、すごく嬉しくて、どう言葉にすればいいか分からなかった。だから私はとりあえず火神君に思い切り抱きついて頬にキスをした。
「大好きよ火神君!」 「お、俺も、好きだ、…です」
そして私は反対側の頬にも同じようにキスをした。
思いが詰まったチョコクッキー (ハッピーバレンタイン!)
−−−−−− 2013/02/14:バレンタイン企画 あこちゃんリクエスト
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