▽秋視点
「あーき!」
ぎゅっと抱きついてくる一之瀬君が何を言いたいのかは分かっている。今日は2月14日、つまりバレンタインデー。私が作ったチョコをくれと催促しているわけで。いつもだったらすぐに渡してあげるけれど今日はそんなすぐには渡してあげない。
だって、私があげるよりも先に他の子のチョコを受け取ったんだもん。
「だーめ。浮気者にはあげませーん」 「えー。俺秋一筋だよ?秋のチョコじゃないと嫌だ!!」 「駄目なものは駄目!チョコならもうリカさんから貰ったでしょう?」 「…?」
あ、もうそうやってすっとぼけるんだもん。私はしっかり見たんだからね、リカさんから可愛くラッピングされた箱を受け取った一之瀬君を。あんなに嬉しそうに受け取ってたくせに知らないフリなんかしちゃって。受け取ったなら受け取ったって正直に言って欲しかったのに。
「あ!あのときか!」 「思いだした?」 「あははっ、秋勘違いしてるよ。あれは秋宛てのチョコを預かっただけだよ」 「私、宛て?」
一之瀬君はバッグから可愛い箱を取り出して私に差し出してきた。確かにこれはあのときリカさんが一之瀬君に渡したものと同じ。リボンにと箱のあいだに挟まっていたメッセージカードを開くと確かに【秋へ】と書いてある。 一之瀬君の話によると、リカさんは私以外にも夏未さんや音無さんにも友チョコを配っていて、二人にはすぐに渡せたけれど家事全般を受け持っている私には中々渡す機会がなくて、それで一之瀬君に頼んだということだった。つまり全て私の勘違い。
「〜〜っ!!」 「秋ヤキモチやいてくれたんだ?嬉しいよ!!」 「もう!!!!」
(私以外のチョコを受け取らないで欲しい、なんて。わがままかな?)
恋をして、ちょっとわがままになった
title by ロストガーデン
−−−−−− 2013/02/14:バレンタイン企画 花火ちゃんリクエスト
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