!童話パロ(狼と赤ずきん)・原作とは多少異なります



ある森の奥に一人の女の子が両親と一緒に住んでいました。その女の子は容姿がとても愛らしく、出かけるときにはいつも赤い頭巾をかぶっていました。そのことから、『ずきんちゃん』と呼ばれていましたが本当の名は千鶴と言いました。ある朝、千鶴は母親に頼み事をされました。

「おばあちゃんの家に、お菓子と飲み物を届けてちょうだい」
「はい、分かりましたお母様」

千鶴は嫌がりもせず、引き受けました。母親は優しい娘に育ったことを心から喜び、抱きしめました。そして千鶴の分のお菓子の量をそっと、増やしたのでした。

「行って来ます」
「行ってらっしゃい。狼について行ったら駄目よ」
「分かってるわお母様」

母親のその言葉を今まで何百と聞いてきた千鶴は、もう当たり前のことだった。狼にはついていかない、もし遭遇した場合の対処も習得済みだ。千鶴は久々に祖母に会えるのが嬉しくてたまらなかったので、いつもと違う道で行こと、一人では通ったことのない道を選択してしまいました。しばらく歩いていると、突然草むらから大きな体をした狼が・・・いえ狼の耳と尻尾を持つ狼人間が現れたのです。見たこともない狼人間を目の前にして千鶴は固まって動けなくなってしまいました。

「…え、あ、お、狼さん?」
「どっからどう見ても狼だろ?さあ、喰われたくなかったら…」
「なかったら…?」

ぎらりと光る目に怯える千鶴。どんな要求をしてくるのだろう。びくびくとしながら次の言葉を待つ。

「俺をばあさんの家に着くまでお供にしてくれ」
「…え?お、お供?」
「そうだ、何だ。不満でもあるのか?」
「い、え。ないですけど、私を食べないんですか?」

千鶴が怯えながらそう尋ねると、はははと腹をかかえて豪快に笑い出した。全く今の状況が把握できない千鶴は首を傾げて?マークを浮かべる。狼は笑いすぎで瞳にたまった涙をぬぐいながら、俺は人間は喰わないんだよと言った。主に、森の動物を狩って焼いて食べるらしい。

「で、でもお供ってどういうことですか?」
「…ああ、それはお前と話がしたくて」
「話がしたい?私と、ですか?」
「お前以外誰がいるんだよ。…俺、いつもお前が楽しそうに散歩してる姿を見て話してみたいと思ってたんだ」

恥ずかしそうにそう言った狼がとても可愛く見えた千鶴は、優しく微笑んだ。狼はその笑顔に暫く見惚れる。あまりにも優しく可愛らしい笑顔だった。

「じゃあ、行きましょう?狼さん」
「…おー。あ、それと俺の名前は龍之介だ」
「龍之介さん、ですね。素敵な名前です」
「…っ」

最後まで振りまわされっぱなしで祖母の家まで行くことになる狼。でもとても楽しそうに笑っていた。とある日の、運命的な出会いのお話。


赤ずきんに恋した狼

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▽10万打:匿名さん
リクエストありがとうございました。



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