夕日に照らされた海岸をロココと夏未は並んで歩いていた。聞こえるのは、小波の音と砂浜を歩く音のみ。お互いに何も言葉を発さず、静かに砂浜を歩いた。
「ナツミ、」
ロココは静かに夏未の名前を呼ぶ。すると夏未はゆっくりと隣を歩くロココに顔を向けて、そして微笑んだ。夏未の笑顔は夕日に照らされ、より一層ロココには輝いて見えた。あまりに綺麗なその笑顔に言葉を失うが、ロココ、と自分の名前を呼ぶ声に我に返る。
「どうしたの?」
「その、ね、大したことじゃないんだけど、いいかしら?」
「うん!何でも言ってよ、ナツミの言葉なら喜んで聞くから」
それはロココの心からの言葉だった。今夏未の横を歩けるだけでロココは幸せだった。遠くに感じていた愛しい人の存在、今はこんなに近くに感じることができる。ロココにとって、サッカーと同じくらい夏未は大切な存在になっていた。もう離れることなど考えられないほどだ。その夏未の言葉なら、どんな言葉もロココは受け止めるだろう。
「今私、すごく幸せよ。今まで生きてきた中で一番、幸せ」
はにかんでそう言った夏未。頬をピンクに染めて、照れくさそうに笑いながら言う夏未を見てロココが抱きしめずにいられるわけがなかった。目の前にいる可愛らしい自分の彼女をロココは強く抱きしめ、首下に顔を埋めて静かに微笑んだ。
二人しかいない世界で
(愛を確かめ合った)
title by 霞む想い出
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