▽誰か←豪炎寺←春奈/春奈視点

多分、豪炎寺先輩から見れば私は『鬼道有人の妹』という認識しかされていないと思う。恋愛対象、としては見てもらえない。そんなこと分かっている、分かっているけれど、どうしても諦められない私がいる。諦めが悪いのは良くないことだって分かっているけれど、どうしても豪炎寺先輩への気持ちは捨てられない。

少し、ほんの数分でもいいから私を女の子として見て欲しいです。

「音無…?」
「豪炎寺先輩のことが、好きです」
「……」
「ずっと、ずっと好きだったんです」

そう告げれば豪炎寺先輩はすごく困った顔をして、私を見つめてきた。真っ直ぐな瞳、私はこの瞳が好き。自信に満ち溢れている瞳。サッカーをしているとき、一番輝く瞳。この瞳に見つめられて、私は次に言うはずだったの言葉が出てこなくなってしまった。あまりにも真っすぐで、思わず視線を逸らしてしまう。

「…あの、豪炎寺、先輩」
「ありがとう。…けど、」
「言わないで下さい」

あなたが誰を見ているかは、もう知っているから。豪炎寺先輩を好きになったと同時に好きな人が誰なのかも知ってしまった。けれど私はずっと豪炎寺先輩を想ってきた。だから、豪炎寺先輩の口からはその言葉は聞きたくない。私は思いを伝えられただけで十分だから。

「思いを伝えたかっただけなんです。だから、言わないで下さい」
「…すまない」
「いえ、いいんです。ありがとうございます」

思わず涙が出そうになるけど、必死で作った笑顔。豪炎寺先輩はそれに気づいて私の頭を撫でようと手を伸ばしてきた。けれど、直前で手を止めてハンカチを渡してきた。多分、私に気を遣ってくれたんだと思う。告白を断っといて触れるのは駄目だ、そう思ったんだと私は気づいた。


中途半端な優しさはいらない
(その優しさは残酷すぎるから――…)


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