▽浜野視点

いつでも山菜の視線の先には、山菜にとって特別な人である神童がいる。俺のことなんて眼中になくて、話しかけることもできない。多分できたとしても、会話の8割は神童のことだろう。俺以外の男の話をされるなら、最初から話しかけない方がいい。それの方がよっぽど楽だし、つらい思いもしないでいい。けど、見ているだけはもっと辛い。

***

「あれ、浜野君。まだ帰ってなかったんだ」
「んー。山菜もこんな遅くまで何してんの?」
「私は、シン様の写真整理」

にっこり笑って俺にカメラの中の神童を見せてくる。何で、そんなに可愛い笑顔でほかの男の写真を見せてくるんだよ。俺にはそんな笑顔見せたことないくせに。神童、だからか?神童だから山菜をこんな笑顔にできるんだ。ああ、俺が神童に勝てるわけないじゃん。山菜はこんなに神童のこと好きなのにさ。けど、このまま諦めるなんて俺は嫌だ。せめて、俺のことを男として意識してほしい。好きにならなくてもいいから、意識して俺のことで頭がいっぱいになればいい。俺は山菜を抱き寄せて頬にキスをした。

「俺の前で神童の話はしてほしくない」
「…え?」
「好きだって言ってんの」


他の男の話はしないで
(真っ赤になった山菜の顔は可愛くて。一歩前進できた気がした)


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