▽映画後/剣城視点

隙を見せればあっという間に奪われてしまうことはちゃんと頭では分かっていたはずだった。けれど実際こうして空野の心はいとも簡単に奪われてしまったわけで、何て手強い奴がライバルなんだとため息が出た。サッカーだけではなく、こんな恋愛ごとにまでライバルとして登場してくるなんて。

「本当に侮れないなお前って男は…なあ、白竜」
「どうした剣城、今更怖じ気付いたか」

フフンとなんとも憎たらしい笑みと共にそんな言葉を口にされた。怖じ気づいてなどいない。ただ、厄介な男がライバルになったものだと改めて事の重大さを思い知ったのだ。
この間まで俺達の傍で、俺達と同じように一緒に笑っていた空野が今では白竜の横で、白竜に笑いかけている。誰がこうなることを予測できただろうか。

「空野、いや、葵は俺にたくさんの幸せを与えてくれた。だから俺も同じように幸せを感じてもらいたい」

白竜の口からまさかそんな言葉を聞けるとは思わなかった。白竜は本気で空野のことを想っているんだと、そう思うといてもたってもいられなくなる。空野のことを好きなのは俺だけじゃない。俺も白竜と同じくらい、いやそれ以上に空野のことが好きで、大切で。これから先俺の隣で笑っていて欲しいと願うくらいの存在だ。簡単に白竜に渡してたまるものか。
白竜は俺の怒りの表情に気づいた後、驚いたような表情をする。

「たかがマネージャーにここまでお前が本気になるとはな」
「そういうお前もだろう、白竜。自分達のマネージャーでもない空野にどうしてここまで」

俺の言葉に白竜は何故か笑って口にする。答えなどない、と。俺達雷門サッカー部を必死にサポートしている空野の姿を何度か目にするうちに、気づけば好きになっていたと。恋に落ちるのに理由などありはしないと白竜は言う。いや、そもそも必要ないのかもしれない。理由は理由でしかなく、結局最後に好きだと決めるのは自分自身だからだ。

「お前はここで諦めるか、剣城?それもまた勇気だと思うぞ」
「馬鹿言うな。空野のことを俺がそんな簡単に諦めると思うか?俺を侮るな」
「…ふっ。そうだな、それにそんな簡単に諦められたらつまらん」

俺がそう答えることを分かっていたような表情だった。白竜は俺の言葉に嬉しそうに笑う。そしてついに戦いの火蓋が切られるときだと、何となくそう感じた。白竜は少し堅くなった俺の表情を見て吹き出したと思えば、一瞬で真剣な表情にかわる。ああいよいよだなと。
俺はこれから始まる白竜との厳しい戦いを想像して、あまりの楽しさに一人笑ってしまう。白竜はそんな俺をじっと見つめて静かに口を開いた。

「さあ始めよう、葵の心をかけた真剣勝負を」


隙を見せればあっという間に

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50万打企画。しのさんリクエスト。
リクエストありがとうございました。葵受けということでしたので今回は剣城と白竜のフィフスセクターコンビにしました〜。二人共とても独占欲が強そうなので葵ちゃんの言葉も聞かずにどんどん話を進めちゃいそうですね。とても楽しく書くことができました。ありがとうございました。


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