inzm sss | ナノ



▼ 一乃と空野

心地よい風に、さんさんと照りつける太陽。絶好のデート日和である。待ち合わせ場所に早めに着いた一乃がそわそわと周りを見渡していると、白い清楚なワンピースを着た葵が走ってきた。制服やジャージ姿を見慣れているせいか私服が随分と新鮮に感じる。一乃の目の前まで走ってきた葵は、一度大きく深呼吸をして息を整えた後微笑んだ。

「おはようございます、一乃先輩!」
「あ…ああ。おはよう」

いつもの笑顔と元気な声で挨拶をする葵。だが一乃は葵の私服姿に見惚れてしまい返事がワンテンポ遅れてしまった。葵は一乃のその様子に自分の私服にどこかおかしいところがあるのかと、近くにあったショーウィンドで確認する。一乃は葵のその行動を見て慌てて否定した。

「いや、変とかじゃ、なくて」
「じゃあ、似合ってますか…?」

心配そうに首を傾げながら尋ねてくる葵。身長差的に自然と上目遣いになるわけで、一乃は別の意味でも焦った。しかしそれを悟られないためにも、気持ちを落ち着け「似合ってる」と口にする。葵は一乃のその一言で、頬を染め嬉しそうに微笑んだ。朝の挨拶をしたときの、いつもの笑顔ではなく、一乃にだけ見せる笑顔だった。一乃はその笑顔を見ると葵と同じように頬を染め、照れくさそうに笑う。

「それじゃあ、行くか」
「はい!」


君の隣を歩くことが俺にとってどんなに幸せなことか
(きっと君は知らないんだろう)



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -