刀を振り上げれば、アッシュブラウンに染められた髪がふわりと舞い、刀が落とされればその余波で髪はたなびく。 初めて見たときは戦慄したのだ。 その冷たく尖った美しさに。 大和の妙技も美しいには美しいが、彼の技はやはり荒っぽく、粗暴さが残る。 ところが彼女はそうではない。 冷え切った空気の中、打ち出される一足一刀は、まさに芸術。 無駄のない彼女の斬撃の後に残るのは、首切り死体。 首落ちの花。 椿。 花弁を散らすことなく、潔く落ちていく高潔の花。 清く、美しい。 彼女そのもの。 「初めて会ったときにそこまで考えていたなんてね」 あきれ声で愛しい彼女が言う。 肩をすくめるその動作まで可愛らしく美しい。 ソファの上にふたり。 肩に手をまわして抱き寄せれば、それを見ていた大和が迷惑そうに顔をしかめた。 余所でやれ 睨みつけてまでそんなこと思わなくってもいいのに。 肩を抱き寄せた手を上にあげ、ひらひらと振って見せると、ため息が聞こえた。 もちろん大和のもの。 大和の隣の千早は、周防が買ってきたドーナッツをほおばって幸せそうにしている。 当の周防はその向かいで千早を見ている。 はたから見れば、まさに小動物と飼育員。 2 ← top |