誰も知らないところに、誰もが知ってるお姫様がいた。
お姫様はすべてが白くかった。

「ねぇ、ガル。それは私のお話?」

冒頭を読んだ時、ガルガンダの隣に座る少女がいった。

「いや、違う。似てはいるがな。」

ガルガンダは苦笑しながら答えた。隣に座っている純白の少女に向けて。

「そうね。きっと、お姫様は瞳も白いのでしょう?」

私とは違って。

そうつけくわえて、少女はガルガンダに抱きついた。端から見れば、子供が父親に抱きついてるようにも見えるだろう。

「ねぇ。ガル。」

少女はガルガンダを見据えてそう言った。その、紅玉のような赤い瞳で。

「そのお姫様は、私の知らない色を知っていたのかしら?」

雪のように白く、瞳だけが赤い少女は笑っていた。まるで、何かが可笑しくてたまらないかのように。
電灯だけが輝く地下室で、太陽に嫌われた少女は笑っていた。まるで、自分を蔑むかのように。

そして、ガルが答える前に少女は続けた。

「きっと、知っていたんでしょうね。みんなが知ってるあの色を。ここでは、私だけが知らないあの色を。ねぇ、ガル。お話はいいの。貴方の話を聞かせてちょうだい?私の知らない空の話を。」

色素の無い、雪兎のような少女は笑う。
何も知らない少女の顔で。

遥か遠き空の群青

(太陽に嫌われた少女は、今日も蒼を探ている。)





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