きっと泣いても笑っても朝はやってくるのだ。

昨日泣いていた子供だって、明日になれば笑うかもしれない。






人の感情や好き嫌いは変わる。


ましてや多感な思春期の少女のそれなど。


気がつかないふりをしていたのは俺のほうだった。



子供だと、みくびっていたのは俺のほうだった。











「ロイさん、水浴びしませんか?」


水が出っぱなしのホースを手に持ったままの少女が、

自身がいる庭から見える二階の窓を見上げて大声で呼びかける。



すると、ガラガラと窓が開き、まだ寝起きの顔をした青年が顔を出した。



「こんな朝っぽらから、よくやるねリザ」


あくびをひとつしてから、答えた青年はまだ眠いといった様子で目をこすっている。



「もう10時です!ロイさんこの頃生活リズムがくるっていますよ!」


「昨日、一睡もしてないんだ。さっき寝始めたばっかだし。お願い、リザ寝かせて」


「だーめです!」


「せめてあと5分お願い」


「夜ちゃんと寝るためにも、朝はちゃんと起きてください!」


「リザー」







そんなやりとりが延々と続き、ようやく折れた青年が渋々庭に来た頃には既に口論を始めてから30分もたっていた。


「また昨日も父の書斎で夜更かししてたんですか?」


「うん」


この青年は少女の父親の弟子で、錬金術を習うためにこの家に居候している。


5歳も離れているので青年からしたら少女はかわいい妹といった感じだが

少女のほうは青年のことを少なからず意識しているようだった。


といってもこの少女は恋愛というものに鈍感で、経験が全くないため、その気持ちを恋と理解しているのかどうかは不明だが。
















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