そのうち次から次へと浮かんだ



残像が胸を締め付ける




































嫌な夢を見た。

イシュヴァールの夢だった。

子供だった君がどろりと溶けて消えた。

代わりに人殺しの目をした女がひとり。

否、私が人殺しの目にさせた、女がひとり。

彼女は語りたがらないが、きっと彼女は私の夢を追って、
私を追って、軍に入ったのだろう。

こんな、ことになるとは夢にも思わずに。

自分が私を追って軍に身を置いた、などと、そんなことを言ったら、私がまたそのことを気にするとでも思っているのだろうか。
全くもって見当違いだ。


「これ以上、何を気に病めばいいんだ」

そう、これ以上はないのだ。

これからどんなに罪を重ねたところで、もう。

無性に苦しくなった。泣きたくなった。

だが、それが許されないような気がして、目を閉じたまま

「リザ」

と声に出して君の名前を呼んだ。



瞼の奥に浮かぶ人殺しの目をした女がぐにゃりと消えて、

真っ暗になった。

なんにも、なんにもない、暗闇になった。

私にはこれがぴったりだと自嘲したように笑った後、まだ目を覚ますには早すぎるので、シーツにくるまった。

暗闇が、お似合いだ。

なにかを見ていなければいけないなら、なんにも見ずにいれたほうが、幸せだ。

なにもかも、手放してもいい。

いっそ、死んだっていい。

こんな価値のない人間、いなくなった方がいいのかもしれない。








突然プルルルルルル、と電話が鳴った。

夜中3時にどこの誰だ、と思いながらのそのそと起き上がり、受話器をとると

「大佐」

電話の声はまぎれもなく、リザのものだった。

「中尉、こんな時間に何の用だ。」

「…申し訳ありません、ただ、」

「…ただ?」

「…声が聞きたくなって、申し訳ありません」

涙が出そうになるのを必死にこらえた。

本当は、嗚咽をあげて泣きたかったのかもしれない。

そうしたら、楽になるのかもしれない。

「中尉、私が恋しいなら家に来たっていいんだぞ?」

無理におどけた声を出す。

「いや、いいんです。もう」

リザももしかしたら、不安になったのかもしれないな。

その時に思い浮かんだ相手が私だったのだとしたら、

光栄なことじゃないか。必要とされているのだ。

「ありがとう、中尉」

それだけ言うと、相手の返事を待たずに電話を切った。

これ以上話していたら、泣いてしまいそうだったからだ。

明日あったら、突然切った電話のことを詫びよう。

そのために明日生きていよう。

リザに会うために。

それでいいじゃないか、



それから、さっきまでのことがうそのように眠れた。


















きっと、君をなくしては生きてはいけないだろう

だから、きっと君に会うために生きているのだと。

笑って、どうにもならない明日を生きるのだ。

そうやって、いずれ死に行くときまで。



































……………………………………………

シリアスってみた。




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