生まれ変わったとしても
(君といたい、ずっとそばで)
「もしも生まれ変われるなら、そうだな、人間になりたくない」
勤務中の執務室内で仕事に飽きた大佐が、いつになく真剣な表情でぽつりとそんなことを言うものだから
いつもなら仕事をしろ、と罵るような話に耳を傾けてしまった。
「大佐はなにになりたいんですか?」
私が珍しく話に乗ってきたので、大佐は少し驚いたような顔をした後、にんまりと笑って見せた。
どうしたんですか、気味の悪い笑顔を浮かべて。と口を開こうとしたちょうどその時、
「君と一緒にいられるなら、犬だって馬だって石ころになったって幸せなんだろうな」
なんて大佐が言うものだから、顔が火照るのを感じながら、思わず笑ってしまった。
こんな大佐を叱れない私は、副官失格ね。などど思いながら。
「なぁ、ブレダ…あの人たちおれたちのことなんだと思ってるんだ?机か何かだと思ってるのか?」
「いや、空気だと思ってんだよ。」
同じく執務室の机に座っていたハボックとブレダが飽きれ顔でその様子を見ていた。
「キスのひとつでもすんじゃねえか?」
「おえ、勘弁してくれよ、上官同士のキスなんざみたくねえ」
やっと部下の存在に気づいたロイが大声をあげた。
「うるさいぞハボック!」
せっかくのいちゃいちゃするチャンスだったのにふざけるな、というような眼を向けてくる。
「へいへい、ブレダ、トイレ行こうぜ」
「男同士でトイレって…」
ブレダは真っ青な顔をしていたが、焼かれるよりはましだと椅子から立ち上がり、ハボックに続いて執務室を出て行った。
部下たちが出て行ったのを確認したあと、
「邪魔者はいなくなったし、続き…」
なんて大佐が言うものだから、少し意地悪をしてやりたい気持ちになった。
「大佐、仕事はどうしたんんですか?
「え」
「私、仕事をしない大佐となんて一緒に生まれ変わりたくありません」
ぷいと横をむく私の機嫌を一生懸命とろうと、大佐が仕事に取り掛かったのを横目で見てから、くすりと笑って
犬でも猫でも、なりますよ。あなたと一緒なら。と呟いた。
言ったらあなたはいい気になるから、絶対言ってなんかやらないけど。
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たまには普通に恋人同士
ハボックとブレダの件がいらないとか、そんなことはないのですよ
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