ずっと彼女二人で
雰囲気のよいバーに男が二人。
格好から見て二人とも軍人のようだ。
どちらも黒髪で片方は眼鏡をかけている。
国軍大佐ロイ・マスタングと国軍中佐マース・ヒューズだ。
散々家族話を聞かされてマスタングがぐったりしはじめたころ、
「で、お前は最近どうよ」
そのマスタングの様子に気付いたのか、ヒューズが話を変えた。
「相変わらずだ。上は私を過労死させるつもりらしい。」
「いや、そのことじゃねえよ」
ウイスキーが入ったグラスを傾けながらヒューズが言った。
「リザちゃんのことよ」
いつになく真剣な目をしてマスタングを見るヒューズに、マスタングはおどけた調子で話をすすめる。
「さっきあったばかりだろう。ああ、ちなみに犬も元気だ。」
「ちげえよ!犬はどうでもいい。」
カラン、と音をたてて少しだけ残っていた琥珀色の液体を飲み干したマスタングは
「どうもなっていない。ただの副官のままだ」
「お前なあ、なんもないっておかしいだろ!好きならなんでいわないんだ。リザちゃんだってきっと…」
「ヒューズ」
マスタングはヒューズの言葉を遮り、先ほどのおどけた調子ではなく、鋭い目をして言った。
そのマスタングの様子にヒューズは肩をすくめ、これだからこいつは、と心のなかで呟いた後、
「お前はそれで幸せなのかよ、ロイ」
と聞いた。
マスタングは目を瞑ってふ、と笑った。
「こんな私の側にいてくれるんだ。どんな形であろうと、…いや、私が手放せないだけだがな。」
「お前、この血塗られた手で君を幸せになんてできない〜とか思ってるんだろうがな、それは間違ってる。俺だって、こんな幸せな家庭を持ったんだ、お前にもそういう幸せがあってもバチは当たんないと思うぜ。一生リザちゃんと仕事上の関係でいいのかよ」
「構わないさ」
マスタングは店のマスターにおかわりを頼み
「彼女と2人でいられるのなら、どんな関係だって構わない」
と言ってまた少しだけ薄い笑みを浮かべた。
「2人じゃねえじゃん」
マスタングは不服そうに口を尖らせたヒューズを横目に出された酒に口をつけた。
ずっと彼女と2人でいれたら
それだけでいいと言って笑った。
………………………
ヒュ+ロイが好きだ
[次▲] | [前▼]