照れないで見つめるなんて無理さ







いつものように夕飯の支度をしていると、トン、トン、と階段を降りる音が聞こえてきた。
この軽快な足音はあの人だ!どうしよう、隠れたい。


「…リーザ!」

いきなり大声がして
驚いて振り向くと
お父さんから出された課題を終えたのであろう、満面の笑みのロイさんが立っていた。

「リザー聞いてよ、今日…」
「あ、ロイさん夕飯まだできないんで、散歩でもしてきてください」

直視することができず、視線は宙をさまよう。






ロイさんはお父さんのお弟子さんで、私の家に泊まり込みをしている。いつもなら自分の家からここへ通ってるロイさんが泊まるようになってから今日で3日だ。よっぽど難しい課題だったのだろう。






私が視線をそらしたままでいると、

「リザ、この頃変」

不機嫌そうな表情でロイさんが言った。

「へ、へん?」

「だって俺のこと避けてる!」

「避けてなんて…!」

と言った私ははまだロイさんと目を合わせることができない。

「目、みてくれないじゃんか」

みれるわけがない。
みれるわけがないんだ。
だって目をあわせたら、










ロイさんが近付いてきて、私の手を握った。

「ろ、ロイさん」

ロイさんが目を合わせようと、私の目の前に顔をもってくる。

「どうしたんですか?…離して」

顔が熱い。
真っ赤になるのがわかる。

「いやだ」

「ロイさん…」

いきなりロイさんがこつんと私のおでこに自分のおでこをぶつけてきた。

う、うわあああ

心拍数がはね上がり、なんにも考えられなくなる。動けない。

ロイさんの唇が近づいて……













「熱、ある?顔が真っ赤。」

こなかった。

「な、ないです!」

魔法が解けたみたいに動けるようになった私はロイさんを思いっきりおした。が、ロイさんは細いからだなのにびくともせず、にこにこしている。





怒って顔をあげ、ロイさんを見た。

「やっとこっち見てくれた。」









ちゅっ



と音をたてて唇が触れ合った。







数秒たってやっと我が身に起きたことを理解した私は更に真っ赤になって、ぺたん、と膝をついた。



ロイさんは私の手をぱっと離して、

「散歩、行ってくる」

と言ってくるっと踵を返し、手をひらひらしながら出ていった。







残された私は熟れたリンゴのように真っ赤な頬に手をあてたままで、

鍋が吹き零れる音を聞くまで座り込んでいた。
















……………………………

ロイさん散歩で頭冷やし中




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