noser
鼻の奥がむず痒い。
このやるせない感覚は花粉症患者にはよくあるだろう。
そうだ、くしゃみだ。
三回ほどでそうででない運動を往復してその三回ぶんが一気に吹き出した。
激しく舞う砂ぼこりと激しい爆発音。
一体なんだと前を向いた。
砂ぼこりが落ち着き、それは正体をあらわした。
目に映ったのは申し訳ない程度に建物の基礎の部分だけ残されたお向かいさん宅だった。
「おっ、俺の...くしゃみ...?」
そう呟いた瞬間脳に走っている導線がプツンと音をたてて切れたように意識は途絶えた。
*****
目を覚ますと目の前にあったのは、白。白。白。
白い壁だった。
俺の体から何本かの線が繋がれよく病院にある医療器具が置かれていた。
「目を覚ましたのね」
足元側から女性の声がした。
そちらを見てみると一人の女性が立っていた。
ベッドでないためとても上に見える。
...なんで敷き布団。
「調子はどうかしら?」
女性に対してすぐに返答をしようとしたが思ったより容易く声がでなかった。
「...だ、れだ...お...れ、なんで、ここ...に...」
頑張って声を出し女性に訪ねる。
女性は俺の言葉を聞いて頬を緩めて怪しい笑みを浮かべた。
「能力よ、貴方の能力。」
女性は落ち着いた口調で言い放った。
そして口に手をかざしあくびを一度するとその手を俺に向けた
「おやすみなさい」
女性の声は遠ざかっていった。
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