―とくん、とくん。



胸に押し付けた耳から脳へ、身体へ、静かにそれでも確かに響く心音。落ち着いたそれが余りに意外で、暫し聴き惚れた。


「どんな感じです?」
「…良い感じよ、意外だけど」
「それはそれは…嬉しいですねえ」


降ってきた声の、何時も通りの様でいて何時に無い柔らかさに驚いて顔を上げたら、表情はいつも通りの食えない笑顔。企みが見え隠れするその顔にムッとして身体を離そうとしたけれど、なかなかどうして、心地良いものはこうも手放し難いのか。


「おや、どうしましたー?」
「………良いから暫く黙ってなさいよ」


先程よりも強くしがみついて胸に顔を埋めたら、忍び笑う声が落ちてくるのと同時に暖かな温もりに包まれた。



オイリュトミー

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