こっちを向いてよ、ハニィ



この性格を時には恨めしく思わない事もないけれど。











「プリちゃん」
「……」
「プーリちゃん」
「うるさい。向こう行って」


今日程やっちまった感が拭えない日は無い、と思った。
理由は今目の前で不機嫌そうにしている愛しい少女だ。恐らくそもそもの根源は自分なのだろうがどうやら激烈に怒っているらしく、先程からずっと同じ様な問答を繰り返している。目も合わせてはもらえない。


「プリちゃんプリちゃん」


もうすっかり定着した彼女専用の愛称を喧しく連呼しながら頭をフル回転させる。
一体何が原因だ?寝起きの彼女を我慢出来ずに求めたからか、休日なのをいい事に朝からずっとセクハラしっぱなしっだったからか、はたまた外出先でもベタベタしたのがいけなかったのか。


「……………」


思い当たる節が有り過ぎて到底一つに絞れない。寧ろ全て原因な気がするのは気の所為だろうか。気の所為だと思いたい。
思わず頭を抱えそうになった時、彼女の気配が遠ざかっていく事に気付いて慌てて手を伸ばした。


「待てって!」
「嫌。触んないで」



これは本格的にマズくてヤバいのではなかろうか。完全なる拒否の言葉に、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


「なあプリちゃん、俺が悪かったって」
「何が?理由解ってんの?」
「う……いや…」
「ふーん」
「と、とにかく俺が悪いって事は解ってる、から」


深々と頭を下げる自分は心底情けない姿をしている事だろう、と思う。普段どれだけ優位に立っていても、それはただそう見えるだけで実際は逆だ。この少女に勝てた例など無い(彼女がそれを理解しているかは別として)。
だがどれ程情けなくても、そんな自分が、そんな関係が実は気に入っていたりする。少し揶揄った後に不満そうに此方に向ける背中も可愛く思えたりも勿論する。けれど、それは今の様に冗談抜きで温度の下がりきった雰囲気から得られるものでは決してなくて。



「本当に悪かった……なあ、歩の目が見れねぇと寂しい」
「…………」
「だから、…」










こっちを向いてよ、ハニィ。


END

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