喉、嗄れるまで




私はこんなにも、獰猛だっただろうか。


抵抗も儘ならぬ小動物を、まるで掌で転がす様にして愉しむ程に。









白い肌を指先でなぞって抱き締めるだけでは満たされない。爪で引っ掻いて赤い線を残して更には唇で華を咲かせて。仰け反る喉に甘く歯を立ててそうして満足感に微笑むぐらいが丁度良い。
涙目で睨むその視線を遮る様に目尻へ口付ける。そのまま頬を辿って濡れた柔らかな唇を飽くまで貪ると、そろりと控え目に細い指先が肩を伝って首裏を撫でてくる。きっとその後はいつも通り所在無く無意味に髪を弄るのだろう。其処まで巡らせた思考はけれど唇が弧を描いて完結する前に強制的な幕引きを迎えた。


「―った」


綺麗な瞳の中に映る、痛み故に間抜けな表情をした自分を覗き込む様にして彼女へ意図を問うと、してやったりとばかりに先程自分が浮かべ損ねた笑みをその小さな唇が形作る。


「もう無理だって」


思い切り引っ張った髪へ今度は優しく指先を絡めて弄りながら彼女は宣うた。まるで小さな子へ言い聞かせる響きを持つその言葉に思わず眇めて射抜く。我ながら子供っぽいと思わないでもないがそんな事は最早どうでも良い。被害妄想極まりないけれど、拒絶された様な気がして我慢ならない。こんな風になったのはいつからだろうか。


「…まだ、声出るじゃないですか」



いつも通りの笑みを浮かべて言い放った言葉に、その意味を理解し兼ねてか或いは正確に意図を察してか、ぎょっと眼を見開く彼女の半開きの唇へと己の歪んだそれを重ねた。今日は限界まで挑戦してみよう、なんて彼女が聞いたら怒り狂うかも知れない決意を胸に秘めて。


END

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