一行ラブレター
書いて、消して。書いて、書いて、丸めて捨てて。どんなに考えても、上手い言葉なんて浮かんでこない。
昇華されずに溜まっていくのは、無駄になった紙屑と吐き出せない気持ちだけ。
何でこんなに難しいのよ。自分の思ってる事をぶつけりゃいいだけでしょ?
(いつも意地張ってばっかで、ごめん)
(本当、は)
頭の中に色んな言葉を並べては掻き消す。
漏れ出す溜息は、行き詰まった私の想いみたいに深く、重い。
(らしく、ない)
(こんなの、は)
背凭れに預け切っていた体重を思い切り起こして、机に齧り付く。
ガリガリと力一杯ペンを握って書いた字は少し、…いや目茶苦茶不格好かもしれないけど。
精一杯の気持ちをぶつけてやる。
間抜けな顔なんかされたら、シンプルが一番なのよ!って開き直ればいい。
『好きです』
歪な文字の書かれた紙を握り締めて、私は部屋を飛び出した。
END