ドゥームズデイ 微か風にさらり靡く栗色。意志の強い瞳は常に凛と煌めいて。桜色から放たれるリリックソプラノはいつも甘く優しく響いていたのに。 「もう二度と」 その存在を下界に在る全てに主張する銀の月が遥か宇宙の彼方へと、彼女を連れ去ってしまった。 (違、う) 連れ去るように願ったのは、他でも無く。力が作用したのは満月の所為でも、それこそ神の所為でもないのだ。 その手を、放したのは。 (突き放した、のは) きっと誰よりも彼女の幸せを願っていると思っていた、愚かな男の詭弁故に。 「ああ、…泣きそうだ」 もう二度と、逢えない。 END |