ふわりとスローモーションで靡く綺麗な髪にそして垣間見えた白い首筋に、不本意にも心臓がドクンと跳ねた。


(あ、やばい)


思った時にはもう遅くてきっと揺れているだろう眼は彼の唇を、恥ずかしさに震える両手は彼の服を捕らえて離す事が出来ずにいた。


「…歩さん?」


ぐいぐいと胸元を引っ張る私に眼を丸くした彼はけれど次の瞬間には此方の意図が理解出来たらしく口端をゆるりと吊り上げて見せる。端正な唇は歪むその刹那さえも私の劣情を煽って。


(も、無理)


彼が折れるよりも早く爪先と掌に力を入れて無理矢理半開いていたその唇を奪う。触れた唇は思いの外柔らかくてでも予想通り冷たくてそれでも夢中で貪った。


「ふ…むっ」


舌先で双丘をねっとりとなぞってみせたらそれまでされるが儘だった彼の両腕が素早く動いて私の腰と頭を固定した。
唾液の交換もそこそこにすっかり足に力が入らなくなった私を軽々と抱き上げて、紫の麗人はテラスを後にする。月明かりに浮かぶ彼の表情が何処か生き生きとして見えたのはきっと気の所為ではないだろう。


「うふふ、歩さんから誘ってくれるなんて嬉しいですねえ」
「誰が」


誘うか、と言い掛けて止めた。先程の己の行動は間違い無く情欲を含んでいて、尚且つ相手にも移す様なそれだった。
悔しさを滲ませた溜息の意味する所を正確に理解したらしい男の容を、その頬を拳でぐりぐりと殴り付けてやりたい衝動に駆られた。恐ろしい報復が返ってくるだろうからしやしないけれど。視界の端に捉えたベッドに、さて、と覚悟を決める。





随分感化されたものだ。



そう思いながら柔らかなシーツの上に二人揃って雪崩れ込む。後はもう、互いの思う儘に振る舞うだけ。




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