僕は、保健委員として失格なんだと思う…

この世に絶対なんてない
ましてや、騙し騙されの忍の世界なら尚更だ
なのに、僕は心のどこかであの人だけは大丈夫だと思っていた


「組頭!!しっかりしてください!!!!」

慌ただしい足音をたて、忍術学園保健室に雪崩れ込んできたのは黒い忍装束を身に纏った三人の男だった

急にプロ忍が入ってくるなど何事かと思ったが三人とも見覚えがあるどころか、最早親しいとも言える間柄になってしまった人だった…

「どいてっ…」

いち速く異変に気がついたのは委員長の伊作だった

異変というのは、普段飄々と百人余りの部下を纏めるタソガレドキ組頭が両脇を部下に抱えられていることだ
装束が黒いため、直ぐには気づかなかったが大量の血液が付着しており湿り具合から返り血などでは無いことが明らかだった

「いったい何があったんですか!!?」
「遠距離から火縄銃で…その後近くに配備されついた刺客数十人に囲まれてしまって…」

治療のために服を脱がすと左の腸に銃弾が貫通した穴が開き酷く出血していた
その他にも致命傷ではないが、刃物で切りつけられた出血がある

「致命傷は腹部だけだけど、このままだと出血多量で危ない…腹部の傷は僕がやるから数馬と左近は足を!!乱太郎と伏木蔵は胸から腕にかけて手当てして!!」

「「「はい」」」

伊作の指示でそれぞれの担当部位の手当てをしていく保健委員、しかし伏木蔵は未だ指一本動かすことができなかった

「何してるの伏木蔵!!早くそっち止血して!!」

乱太郎に呼ばれ、やっとのことで雑渡の側まで歩み寄る

ヒューヒューと鳴る喉元も血まみれの手も、胸も、昨日まで自分の名を呼びやさしく抱き締めてくれていた物だと思うと目の前が真っ暗になった

「い…だっ…っやだ…嫌だ嫌だ嫌だ!!!!こなもっ…さっ…ヒック…僕をおいでがないでぇぇぇ…」

必死に雑渡の肩を揺さぶり半狂乱で叫ぶ

ーパシンッー

鋭い音と共に頬が熱を帯ジンジンと痛む

「落ち着きなさい伏木蔵!!雑渡さんは君を置いていかない!君が助けるんだ!!」
「…伊作…先輩」
「急に打ってすまない…落ち着いたかい?」
「はっ…はい!」
「よし!!じゃあ、治療に戻るよ!!」

毎日のように歌ってた包帯の歌も薬草の知識も何の役にもたたなかった…
頭の中はまっしろでただ、この人を助けたい!!助けてみせる!!という思いだけで何をどうしたかなんてなんにも覚えちゃいない…

只、みんなの努力の甲斐あって一命をとりとめた彼のそばを離れたくなくて無理を言って看病を請け負った

みんなが帰ったとたん安堵から涙が止まらなくてそのまま泣きつかれたようで、僕の記憶はそこで途切れた…

頭を撫でる心地よい感覚に意識を浮上させ目を開くと雑渡と目があった

「こっ…こなもんさん!!意識が戻ったんですか!!」
「あぁ…ついさっき目が覚めたよ」

勢いつけて起き上がったことで弾いてしまった腕に本のわずかに苦痛に顔を歪めた雑渡に罪悪感が生まれるがそれどころではない

「うぅ…こなもっ…さっのばかぁ!!ヒック…僕をおいでがないで下さい…」

昨晩流しきったと思っていた涙がまた溢れ出るのを押さえきれずそのままギュウッとしがみつく

「すまない…心配をかけてしまったようだね、でも私は君を置いてどこにも行かないよ」
「ヒック…ほんとうですか??」
「あぁ…本当だとも…誓っても良い」
「ふふっ…プロ忍との誓いなんてスリルですぅ…」

目に涙を貯めながら精一杯の虚勢を張ってみせる伏木蔵

「こなもんさん、誓いなんて言うからには破ったらそれ相応の罰を与えますからね」
「罰??どんなことだい?」
「もう、お膝に座りません!!」
「それは大変だ!!絶対破らないようにしなければいけないな♪」

襖の隙間から差し込む朝陽に照らされながら笑いあう二人
お互い離れることが無いよう、やさしく、しかししっかりと互いの体に腕を回し抱き合った




「…っていうのがしたいから照星くん、その銃で私の腹を撃ってくれないか!!あぁ…勿論臓器ははずしてくれ♪」
「腹ではなく脳みそを撃ち抜いてやろう!!」






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