「メリークリスマス!!」

静まり返った保健室に響く低音ボイスと共に黒服の巨漢が室内に侵入するくせ者の侵入にも関わらず
この部屋にいる忍者の卵たちが(いや、最早学園中が)騒ぎ立てないのはこのくせ者の侵入が常日頃から行われている故である

「こなもんさーん、いらっしゃい♪そろそろ来る時間だと思ってました!!」

いつもの事ながら伏木蔵は侵入者もとい雑渡の元へいち早く駆けつけ定位置となっているお膝に収まる

「こなもんさん、その赤い帽子は何ですか??」
「これは南蛮のクリスマスという催し物の衣装でなんでもさんた、くろうすと言うらしい」
「「さんた、くろうす??」」

室内にいた他の忍たまたちも聞きなれない話に興味を持ち近くに集まる

「南蛮ではクリスマスにさんた、くろうすとゆうおじいさんがよいこに贈り物をくれるそうだよ」
「えー、僕たち貰ったことないですぅ」
「まぁ、南蛮の催し物だからね、こちらにはあまり馴染みもないし…」
「贈り物…」

ガックリと肩を落とす子ども達を見て雑渡はこっそり持っていた袋を取り出した

「いつもよいこの保健委員の子ども達へこなもんさんたからの贈り物をあげよう」
「え、いいんですか??」
「僕たちみんなにですか??」
「そんなお金あったんですか??」
「あとでやっぱり返せとか無しですよね??」
「プロの忍者から贈り物なんてスッゴいスリルー♪」

若干ひどい言葉も混じるなか、それぞれ嬉しそうに贈り物を受け取っていく

「すいません雑渡さん、それぞれに贈り物だなんて…」
「いや、保健委員の子達には日頃からお世話になっているからね」

年長者としてお礼をいう伊作に笑顔で答える

「でも、一人一人にだなんてお金も結構かかったんじゃ…」
「うーん、気になるなら何か食べるものを作ってくれないかい?夕食がまだなんだ」
「こなもんさん、お夕飯まだなんですか??じゃぁ、僕が作ってあげます♪」

こうして雑渡はまんまと伏木蔵との夕食タイムをゲットした
鍋を囲みささやかな夕食会を楽しんだ一行だったが、何処から出てきたのか甘酒が用意されていた

「ちょっと、雑渡さん!!この子達はまだ低学年なんですよ!!」
「伊作君…直ぐに私を疑うなんてひどいじゃないか、これは私が準備したわけではないよ」
「あ!!じゃぁ、さんた、くろうすとかゆう人からの贈り物じゃないですか♪」
「そうですよ伊作先輩!!」
「ということで僕たちも飲んで良いですよね」
「知らない人からの贈り物とか…スッゴクスリルぅぅ♪」

普段なかなか手を出せないお酒に盛り上がる後輩たちに「今日ぐらいはいっか」と了承した伊作はその後ものすごく後悔することになった…


「ちょっと、聞いてます!!あなたはくせ者なんですからね(怒)毎回、毎回何なんですか!!」
「いや、その…」

酔いが回って(鬼の形相で)説教をしだす左近にたじたじの雑渡
その隣では

「いいんです、僕なんて影が薄いし…みんなに忘れられても仕方ないんです…」
「かっ数馬…ごめんね、僕忘れないからさ、ほら元気だして」

自分の不運を嘆き踞る数馬を宥める伊作
一年生二人は甘酒一杯目ですでにダウンしていた

その後雑渡を迎えにきた高坂に左近を無理矢理預け、伊作が何とか数馬を立ち上がらせたところで今日のところはお開きとなった

「伊作君、三反田君は大丈夫かな??」
「はい、自分で立って歩けますし乱太郎も僕が連れていきますよ」
「じゃあ、よろしく頼むね、川西君は高坂が連れてったから大丈夫だし、私は伏木蔵を送ってくるよ」
「くれぐれも変なことはしないで下さいね」

にっこりと笑顔(しかし、目は笑っていなかった)で見送られ、雑渡は伏木蔵を抱いて部屋に向かった

「ん…こ、なも…さん?」
「すまない伏木蔵、起こしたかな?」
「んん、暖かいですぅ♪」

半覚醒状態の伏木蔵は暖を求めて雑渡にしがみついた

「もう少しで着くからね」
「んぅ?こなもんさん、帰っちゃうんですか??」
「そろそろ帰らないと他の連中がうるさいからね」
「ぶぅー…」

雑渡の肩に顔を埋めて唸った伏木蔵だったが、直ぐに顔をあげた

「こなもんさん、今日は贈り物ありがとうございました♪」
「どういたしまして」
「お礼に僕からも贈り物です」


言うが早いか伏木蔵は雑渡の口を吸った

チュッ

それは幼いかわいらしい口吸いだったが、雑渡にとっては一番の贈り物だった




ありがとう僕だけのさんたさん






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