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ーかぼちゃ…かぼちゃが何か言ってる…なんだろう、夢かな?…夢?あれ、わたしはいつの間に寝てしまったんだっけ?…三治郎と伏木蔵と一緒にお使いに出かけて、怪しい箱を見つけて、それから伊作先輩に怒られて……?
ああ!この声はきっと伊作先輩だ!何故焦っておられるのだろう。

「…?いさ…く、先輩?」
「乱太郎!大丈夫かいっ?」

必死な問いかけにゆっくり返事をし、体を起こす。朝起きたときのような気だるさを感じるが、側でホッとした先輩を振り向いて、それは一気に吹き飛んだ。

「い、伊作先輩っ!??何ですか!?どうしたのですか!」
「うん…とりあえず落ち着いてくれ。君も、その…ちょっとおかしいんだ」
参ったような声音で諭す伊作…声は伊作のものだが、姿は…何というか…南瓜だ。体は人間、首から上は南瓜だった。目と鼻、そして悪そうに微笑んだような形で口が真っ黒くくり抜かれている。
乱太郎はというと。
「ひ!何っ…こめかみから何か硬いものが生えて!肌の色もおかしいですぅ!伊作先輩、わたし病気になってしまったんですかっ?」
左右のこめかみから、カラクリに使用する部品がにょきっと生えて、肌は全身青白い。半泣きで南瓜頭の伊作にしがみついたが、一緒にいたはずの二人を思い出して辺りをきょろきょろ見渡す。三治郎と伏木蔵も、すぐ側で倒れていた。同じように様子がおかしい。「ふ、二人とも!」

乱太郎が叫ぶと、二人同時に身じろいで先に三治郎が目を覚ました。
「んー?…乱太郎?」
「うぅ…何が起きたの…?」

次いで起き上がった伏木蔵は、大怪我でもしたのかというくらい全身包帯まみれ。三治郎は頭から三角の耳、お尻からはフサフサした尻尾が生えており、歯と爪は鋭く尖ってまるで狼のようだ。
「わー!何だこれぇっ」
三治郎は頭に手をあてて叫ぶ。尻尾も一緒にピンっと強張った。
「えっと、三治郎、乱太郎、…伊作先輩?うわあ、みんな面白い恰好だね。」
自分の姿には頓着せず、クスクス楽しそうに伏木蔵は笑った。
「さて、三人とも。今の状況は把握できたかい?」
気を取り直して、という感じで半ば強引に後輩達を落ち着かせた伊作は、重そうな頭をズィっと三人に近づける。

「全く、あんなあからさまに怪しいものを疑いもせず開けるなんて!」

その言葉を聞いて、三人は待ったをかけた。
「伊作先輩!ぼくたち開けようとしてません!」
「そうですよ!わたしたちはむしろ捨てようとしてたのに先輩が急に怒鳴るから!」
「びっくりして落としちゃったんです」
「え、じゃあ僕のせい…?」

叱るつもりだったのに実は自分に原因があったと知り、伊作は素直に謝った。
「と、とりあえず!一度みんなと合流して…」

伊作が話している最中、急に三治郎が大声をあげた。
「どうした三治郎?」
「善法寺先輩あれ!!」

三治郎が指をさした方向へ目を向けると、そこに誰か倒れている。大変だ、と伊作を先頭にして全員で駆け寄ってみると、皆再び驚いた。

「尾浜先輩!不破先輩っ?」

優しく気のいい先輩がふたり。
よく見知った顔のはずなのに、見慣れない姿で倒れていた。
それから…

「おやまあ。見たことのある面々なのに、見慣れない姿ですね。仮装大会でもあるんですか?」

この非常時に全くそぐわない呑気な声。そして彼もまた同じように見知った顔に見慣れない姿をしていた。

あぁ…次から次へと…
伊作は頭を抱える。

「「「一体どうなってるのーっ!!」」」
少年たちの悲痛な叫びは薄紫に染まっていく空に吸い込まれていった。




――― もうすぐ日が、沈む




****続。




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