神無月。
国中の神々が出雲へと赴き、
一年の事を話し合う。
それ故にひと月の間、
出雲以外から神がいなくなる――



****

ここは裏々山。
動物たちだけでなく森全体が寝静まった深夜…
闇に紛れて音もなく、黒い影がひとつ、ふたつ−−−

「…組頭、指示通り例のものは全て配置しました」

組頭と呼ばれた真っ黒な大男は、影を振り返ることなく口を開く。
「うん。それじゃあ、もう遅いからみんな帰って良いよ……あと、二日だ」

淡々と言い放ち、隠れていない方の目を夜空にかかる月と同じ形に歪めて笑う上司に対し、部下は少し眉尻を下げて口を開こうとするがうまく言葉にならなかった。
「何、まだ何かあるのかい?」

「…いえ、何でもありません。失礼します…」
結局何も言えなくて、その場を去る。果たして無事でいられるのだろうか…

忍術学園の、生徒たちは。

****
同刻、忍術学園。

学園長の庵には、先程届いた報せに深く深く溜め息を吐く老人と、同じく報せを聞いてヘムゥ…と弱々しく鳴く忍犬がいた。

「今年もまた…きてしまうのか。あと二日……生徒たちを危険な目に合わせておいて、こちらは何も手出しできないというのはどうも…口惜しいのう」

「ヘム…」

「毎回のことだがわしらには見守ってやることしかできん。せめて、みなが無事に学園に戻れるよう祈ろうか…」

悲しげな表情とともに、開いたままだった小窓からぬるりと気持ち悪い風が入ってきたのに不快感を露わにし、閉めようとゆっくり腰を上げて戸に触れる。
夜空にかかる月は暗く…不気味に微笑んでいた。

****続。




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