毎回、彼の言動には振り回されてきた。けど最近はそのまま放っておいたほうが楽だと気づいて…うーん、放っておいたらおいたでまた面倒くさいから軽く反応してあとは流してっていう感じ、だったんだけどなぁ。。。
****

「っすまない雷蔵!やっぱり私には無理だああぁ!!」

「はっ?ちょ、おいさぶろ…」

勢いよく目の前を走り去った級友の背を見送り、竹谷はもうひとりの同級生を振り返った。
「雷蔵。何かあったのか?おまえの片割れ、真っ赤な顔して走っていったぞ?」

「…何があったかなんて、僕が聞きたいよ。あれ、今日三度目なんだけど」
少し困ったように肩をすくめた雷蔵だが…いや、困っているわけではない。

「はは。雷蔵も毎回大変だな」
竹谷は他人事だからと笑いながらそんな軽口をたたくが、雷蔵の顔を見た瞬間その笑みが引きつった。

「……もー本当ーにねぇ…。人の顔見てすぐ逃げるんだよ?二度目までは許せたけどいい加減こっちも…」

雷蔵はそんなことを静かに呟いてじゃあ僕行くね、と竹谷にひらりと手を振って 歩きだした。
…鉢屋が去っていった方向へ。

「…死ぬなよ、三郎…」
色々と不安になった竹谷は二人の向かった先を見つめ、合掌…。
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私は彼の事が大好きだ。何よりもだれよりも大好きだ。出来ることなら毎日、毎分、毎秒…もうずっと見ていたい。目に入れても痛くないというのはこのことだろうと心底思う。
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「はあ。なのにどうして出来ないのだろう…」

トボトボ下を向いて歩き続けて、いつの間にか裏山まで来ていた。
「いや、自信を持つんだ私!きっと出来る!よし、もう一度雷蔵のところへ……」
「僕に何か用?」
「ら!雷蔵っっ?」

踵を返した矢先に先ほどまで目に入れても痛くないと思っていた雷蔵が立っていて、鉢屋は死ぬほど驚いた。

「三郎。一体今日のは何なのさ。僕に何か言いたいことがあるならハッキリ言えよ」

不機嫌を言葉にのせて鉢屋を問い詰める。
「いや、言いたいことは特にないけど…」

「…こっちは、一日中人の顔見て逃げられての繰り返しで流石に傷ついたんだぞ」
ぽそっと呟いて下を向いた雷蔵を見て、鉢屋はひどく焦る。
「っ、え、あ、雷蔵!ごめん!そんな顔させたかったわけじゃ…実は、図書室で読んだ本に、好きな人と毎日4秒間見つめ合えば愛情が更新されるというのがあって…」

それで…と、急に恥ずかしくなったのか鉢屋は真っ赤になりながら言葉尻を下げていった。雷蔵は首を傾げる。
「それを試そうとしたの?じゃあ何で逃げるんだよ」
「…いざ目が合うと、緊張するというか、恥ずかしいというか…」

そんな言い訳を聞いて雷蔵はため息をついた。
「三郎…」
名を読んでから、両手でがっと鉢屋の顔を押さえる。
「雷蔵?!なんっ…」
「目、そらさないでね」

そして、心の中で数を数える。
ー1、2…3

4。数え終わると同時に二人ともパッと目をそらす。雷蔵は鉢屋を解放した。
「本当だ。これ、恥ずかしいね」
照れて眉尻を下げて笑う、鉢屋の好きな雷蔵の表情のひとつ。

「…効果は期待できるけど…」
鉢屋の言葉に雷蔵は頷いた。
「うん、そうだね。毎日続けてみる?どうしよう?」

あ、雷蔵が迷い始める前に言わなければ…
もちろん、答えはひとつしかないのだけれど。
****終わり。


愛情の更新


少し遅くなりましたが、11.22!





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